問診の順序は,本人が最初で,家族はあとにする
不安や緊張が取れるように聞いていく
最初は,差し障りのないことから聞いていく
答え方,表情,反応を観察する
発作などの症状の現れ方と経過をとらえる
認知機能障害の有無がとらえられるような質問をする
生活の様子の変化がとらえられる質問をする
原因疾患のヒントが得られるような質問をする
認知症の診断は,最初に認知症かどうかを診断し,ついでその原因疾患を鑑別していく。そのために,問診,神経学的診察,神経心理学的診察,血液検査,髄液検査,脳波検査,画像検査などを実施していく。問診が必要なことは,他のすべての疾患の診断においても共通ではあるが,認知症の診断においては特に重要である。認知症かどうかは画像検査では判断できず,問診と神経心理学的診察によって判断することができる。そして,問診によって,記憶障害や見当識障害などの認知機能や症状・状態が評価でき,原因疾患の鑑別に役立つ大切な情報を得ることができる。
認知症の診断は,記憶障害や実行機能障害などの認知機能の低下により生活に支障をきたしているときになされる1)。したがって,生活の様子を把握するためには,本人からだけではなく家族などの周囲にいる人からも情報を得る必要がある。認知症の診断のために受診するときは,家族が同行してくることが多い。そのときは,本人と家族とを別々に問診することが理想である。しかし,現実には同席したままで問診していることが多いと思う。その場合には,最初に本人に聞き,そのあとで家族に聞くのが基本である。本人に尋ねることをほとんどせず,家族からのみ情報を得るのは正しくない。家族の中には,本人を前にして言いたくないこともある。そのときは,あとでメモにしてもらうか,本人が検査に行っている間に聞くなどの配慮も必要である。その他,問診票を作成しておいて診察前に記載をしてもらうのも1つの方法である。
最近は,物忘れを心配して1人で受診する人も少なくない。その場合は,次回は家族と一緒に来るように話をする。一人暮らしで同席してくれる人がなく本人への問診だけのときは,地域包括支援センターの助けを借りることもある。
問診時の配慮として,本人の尊厳を傷つけないような聞き方や言葉の使い方をすることは当然である。認知症が疑われる人は高齢者が多いので,聴覚や視覚の低下などの恐れも考慮して問診をする。難聴があると,理解が悪いと誤解してしまうことがあるからである。
認知症かどうかが判断できるような情報と,認知症の原因疾患の診断に役立つ情報が得られるように問診を進めていく。認知機能の低下があり,生活に支障をきたしていることが認知症の症状であるため,認知機能の低下の有無と生活の様子がわかるような質問をする必要がある。そして,会話の中で答える様子や返事をするまでの時間などを観察することで,意識が清明かどうかを判断する。同時に表情や話し方から,うつ的かどうかも見ていく。
認知機能については,認知機能テストをすればわかることではあるが,問診からでも見当識障害,記憶障害,理解の障害,判断力の低下,実行機能障害などの有無を検出できる。それには認知機能の低下が判断できるような質問を本人への問診の中に,警戒感や不快感を抱かせないようにさりげなく入れていくことで可能である。家族には,普段の生活の様子を詳しく聞いていく中で,認知機能の低下を知ることができる。
生活の様子については,家族からの情報が必須である。認知症の診断には,今までの生活からの異変がわかるようなことを問診から得る必要がある。本人に対しては,今までの教育歴,職業歴,趣味などの生活歴についても聞いておくことが必要である。
認知症の原因疾患の診断に役立つ情報を得るためには,まず発作などの症状の現れ方と進行の様子を聞く。認知症性疾患では,発症の様子や経過については家族からの聴取が必要である。そして,既往歴,合併症,現在飲んでいる薬などの情報も得る。その他,幻視や妄想などの行動・心理症状の有無を聞くことも大切である。
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