精神医療における電気痙攣療法(ECT)の歴史は1938年にまでさかのぼる。前頭部に電極を置き数秒間通電することで全身痙攣を引き起こすものであり,統合失調症,うつ病など広汎な精神疾患に対して施行され,大きな治療効果を挙げている。しかし,過去には説明や同意もなく無麻酔で実施されたり,中には懲罰的に施行されたこともあるなど,不適切と言わざるをえない事例があったことも事実で,批判の高まりを受けて一時ECTは精神医療の現場でほとんど見られなくなった時期もあった。
80年代に入って,総合病院精神医学という領域の萌芽とともに,麻酔薬と筋弛緩薬を用いてより安全に実施されるECTが普及しはじめた。これを修正型(modified)電気痙攣療法(m-ECT)と呼ぶ。
また,2002年に定電流短パルス矩形波(パルス波)治療器が認可されたことで,わが国のECTは過去の暗い記憶として語られる治療法とは面目を一新し,国際的水準に達したと言えるようになった。
現在は,パルス波治療器を用いたm-ECTが,より安全に,かつ最大の効果を上げられるように,手技,治療器のパラメータ設定,麻酔方法,発作の質の評価,安全性など,様々な面で研究が進められている。
【参考】
▶ 本橋伸高, 他:精神誌. 2013;115(6):586-600.
【解説】
大屋 大*1,鷲塚伸介*2 *1信州大学精神医学 *2同教授