No.4867 (2017年08月05日発行) P.10
登録日: 2017-08-04
最終更新日: 2017-08-03
“第2の豊洲”として一般メディアも報道した都立広尾病院の移転を巡る問題が7月24日、現地建て替えという結論で決着した。昨年11月5日号で小誌は、地域医療構想との整合性を考慮せずに移転を決定したプロセスが不適切であると指摘した。2017年度の東京都予算で移転先用地取得費370億円を計上しながらも、方針が大きく変更された一連の騒動を振り返ってみたい。
広尾病院(図)は病床数478床で、23区唯一の広域基幹災害拠点病院に指定されている。耐震性や老朽化の問題から、かねて改築・改修の必要性が指摘されており、病院では検討を進めていた。
移転を巡る一連の流れを表1にまとめた。予算が都議会を通過する1年以上前の2015年1月には、移転先が確定していないにもかかわらず都立病院を管轄する東京都病院経営本部が、前病院長の佐々木勝氏に移転する方針を通達している。
しかし、医療ニーズの把握など病院建設に不可欠な検討をする前に、移転を決定したプロセスに異議を唱えた佐々木氏が、当時の副都知事に再考を直談判した結果、副都知事が「医療機能」と「改修・改築」のあり方に関する2種類の調査を指示した。後者の調査では現地建て替え案を支持しているが、その後都は独自に「整備に係る調査」を実施。ポイントは結論が出る前の調査発注とほぼ同じタイミングで佐々木氏に、舛添要一都知事(当時)の「レガシーとして青山移転」と通達している点だ。広尾病院は“移転ありき”の政治案件だったのだ。
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