厚労省は5日、4月に実施する診療報酬改定の関係告示を官報に掲載し、関係通知を全国に送付した。同省の説明などを基に、注目点数の取り扱いのポイントを解説する。
2014年度診療報酬改定の関係告示・通知が出された5日、厚労省は地方厚生局などを対象とした診療報酬改定説明会を都内で開いた。同省の宇都宮啓保険局医療課長は今改定について「社会保障・税一体改革の中で示された2025年のあるべき姿、地域包括ケアシステムの構築を目指す第二歩目に位置づけられるもの」とし、「厳しい改定財源の中で、最も大きなテーマである医療機関の機能分化・強化と連携に重点的に取り組んだ」と強調した。
以下、説明会での医療課担当官の説明や告示・通知の内容に基づき、多くの医療機関に関わる主な改定項目について取り扱いのポイントを解説する(告示・通知等の全文は本誌HP2014年度診療報酬改定関連資料から閲覧できます)。
今改定では、在宅医療の不適切事例への対応として在宅時医学総合管理料(在総管)、特定施設入居時等医学総合管理料(特医総管)の「同一建物における複数訪問時」の点数を新設し、同一建物以外の約4分の1に引下げを行った。今回の大幅引下げは、近年急増しているサービス付き高齢者住宅などの入居者を、医療機関に有償で紹介するビジネスが一部で横行している状況に対応したもの。併せて療養担当規則も改正し「保険医療機関等が、事業者等に対して、金品を提供し、患者を誘引することを禁止」と明示した。しかし4分の1への引下げは、在宅医療に“適切”に取り組む医療機関までも大幅な減収となる恐れがあることから、厚労省は通知のレベルで除外要件を設けた。
通知では、在総管と特医総管は月2回以上在宅患者訪問診療料を算定した場合のみ算定できると整理。その上で、同一建物における管理料の減額の除外案件を、①月1回以上、訪問診療料の同一建物以外(833点)を算定した場合、②同一患家等で2人以上の同一世帯の夫婦等を診察した場合(夫婦等が共に訪問診療の対象の場合に限る)─とした。例えば特定施設などの場合、月1回当該患者のみの訪問診療を行う日があれば、他の日に入居者全員を診察した場合でも減額とならない。
●緩和措置も施設からの医師引揚げに懸念
さらに同一建物における複数訪問時の患者数のカウントについても除外要件を設け、①往診を実施した患者、②末期の悪性腫瘍と診断された後、訪問診療を始めた日から60日以内の間、③死亡日から遡って30日以内の患者─についてはカウントしないとされた。また特定施設、グループホーム等での患者数のカウントについては「医療機関単位ではなく医師単位(ただし医師3人まで)」とされた。
訪問診療を行う場合、患者の同意を得ることや訪問診療が必要な理由をカルテに記載するなどの取り扱いも明確化。説明を行った医療課の一戸和成課長補佐は「同意を得ずに訪問診療してはいけない。通院困難者であることを書いてもらいたい」と強調。訪問診療の対象者については今後、例示する予定だ。
今改定は“在宅復帰”をテーマの1つとしているが、同一建物への複数訪問時の訪問診療料も200点から103点まで引き下げられ、外来と大差がなくなった。現行の診療報酬体系を前提として施設訪問をメインにしてきた在宅クリニックへの影響は大きく、施設から医師が撤退するなどの事態も想定されることから、厚労省は施設と医師会が連携して医師確保を行うよう呼びかけている。
一方、外来分野で主治医機能の評価として導入された「地域包括診療料(1503点)」「地域包括診療加算(20点)」は、在宅患者についても算定できるかどうかが明確化されていなかったが、通知に「訪問診療時(往診を含む)は算定できない」と明記。算定対象は外来患者に限られることが示された。一戸課長補佐は、地域包括診療料と地域包括診療加算は患者を総合的に管理する主治医機能の評価という点で「在宅総管・特医総管と同じ管理料」と述べ、地域包括診療料/診療加算を算定できるのは通院可能な患者が外来受診した場合であり、在総管・特医総管を算定できるのはあくまでも通院困難な在宅患者と説明した。
●“疑い”病名は算定対象外
診療所は地域包括診療料も地域包括診療加算も算定できるが、届出についてはいずれか一方のみとされている。ある患者について、地域包括診療料を算定するかどうかは患者の状態に応じ月ごとに選択できるほか、月内でも出来高に変更できるが、出来高に変更した場合は7剤投与の減算規定の対象となる。
地域包括診療料/診療加算の対象は「高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち2疾患以上を有する患者」となるが、「疑い」の場合は除くとされ、レセプトに対象疾患を明記する必要がある。このほか「関係団体主催の研修」を修了した担当医を決めること(2015年4月1日施行)や、院外処方を行う場合、病院は「24時間開局」薬局、診療所は「24時間対応」薬局等を原則とすることも要件とされているが、研修の具体的な内容や薬局の定義については疑義解釈で後日改めて示される予定だ。
入院医療で適正化の最大のターゲットとされたのが7対1一般病棟入院基本料。今回の改定では同入院料について、①長期入院患者に対する特定除外制度の廃止、②重症度・看護必要度の名称と項目内容の見直し、③自宅や在宅復帰機能を持つ病棟、介護施設へ退院した患者の割合の基準の新設、④短期滞在手術基本料3の対象手術の拡大と対象患者の平均在院日数計算対象からの除外、⑤データ提出加算の届出の要件化─などの見直しが行われる。このうち③の自宅等退院患者割合基準は75%以上とされ、5日の説明会では計算式(別掲)が示された。
自宅等退院患者割合は直近6月間の実績で算出する。現時点で75%未満の7対1病棟は特定機能病院にもあるとされ、経過措置の終了する9月末時点で基準を満たすためには、多くの病院で早急に対策を講じる必要がある。また自院への転棟患者が計算式から除外されたことで、「自宅等」の対象となる各病棟・施設の確保が必要となり、地域の医療施設・介護施設との密な連携が重要になりそうだ。
今改定では地域包括ケアを支える病棟の役割を評価する「地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)」が新設された。
5日の説明会では、今月31日時点で10対1、13対1、15対1入院基本料を算定する病棟が地域包括ケア病棟入院料の届出を行う際の取り扱いが明示。地域包括ケア病棟入院料を届け出ている期間中、7対1入院基本料を届け出ることはできないが、一度すべての病棟を7対1入院基本料にしてから一部の病棟を地域包括ケア病棟入院料に移行させることは可能であることが明確化された。一戸課長補佐は、厚労省の狙いは「地域包括ケア病棟入院料の算定で余裕が出た看護職員を充当して、7対1入院基本料を算定できるようにすることを防ぐ」ことにあると説明した。
このほか地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)1は、患者1人あたりの居住面積が6.4㎡以上であることを要件としているが、面積の測定は内法で行うことが明示された。経過措置として壁芯による測定であっても今月末までに届け出た場合のみ4月1日以降も有効なものとして取り扱われる。
病院勤務医の負担軽減については、前回改定に引き続き重要なテーマとされた。一定の施設基準を満たした場合に休日・時間外・深夜加算を見直し、従来の2倍に引き上げる。説明会では、①予定手術前の当直(緊急呼び出し当番を含む)の免除、②交代勤務制、チーム制、時間外・休日・深夜の手術・1000点以上の処置の実施に対する医師(術者または第一助手)の手当支給のいずれかを実施、③採血、静脈注射、留置針によるルート確保について原則として医師以外が実施していること─などを要件とすることが明示された。①は毎年1〜12月の実績で評価(年12日までは当直の免除をしなくてもよい)。②の医師の手当は、「休日・時間外・深夜・当直手当など、医師を拘束することに対する手当とは別に、医師が手術を行うことに対する手当」(一戸課長補佐)を指す。③の医師以外が行う業務には、点滴注射も含まれる。
今回の改定は一定の準備期間を要する大幅な見直しが多いことから、45項目の経過措置が設けられた。主な経過措置は上掲の通り。
3月31日で廃止される亜急性期入院医療管理料については同日までに届出を行っている病室は9月30日まで算定できる。
通知では4月1日に遡って算定する施設基準届出の提出期限を4月14日(月)の必着としているが、一戸課長補佐は「遅れる医療機関が必ず出る。多少の遅れであれば柔軟に対応していただきたい」と各地方厚生局に呼びかけた。