(埼玉県 K)
ご質問の前提1「質量を持たない光もエネルギーを持つ」も,前提2「E=mc2」もそれぞれは誤りではないのですが,前提2のE=mc2は質量を持つ物体についての式なので,光に関する前提1と両立できません。また,E=mc2は相対論の原理を表す方程式というより,相対論から導かれた結果の1つにすぎないと言ってよいでしょう。
「観測者の速度によらずに(相対性),光速は一定(光速不変)」に基づいた特殊相対論では*1,質量mの物体が速度vで運動している場合,その全エネルギーEと運動量p=(E/c2)vに関して,以下の関係が成り立ちます*2。
E2-p2c2=m2c4 …… ①
静止している物体の場合,速度v=0から運動量もp=(E/c2)×0=0となるので,式①からE=mc2が導かれます。つまり,世界一有名な式E=mc2は静止物体にしか適用できません。一方,光の場合,光速不変では静止しようもなく,v=cからp=(E/c2)c=E/cのように,エネルギーと運動量の関係E=pcが常に成り立ちます。したがって,式①の左辺も常に0となり,光は質量を持たず,ご質問の前提1とも整合します。つまり,式①は物体のみならず光にも適用できます。
また,式①は「質量mの物体のE2- p2c2の値は,そのE,pを測定した観測者によらずに,その物体の静止エネルギーmc2の2乗に等しい」を意味し,相対性を反映していると言えます。これを確認するために,物体に対して,静止しているアリスとある速度で運動しているボブという観測者を考えましょう。
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