日本耳鼻咽喉科学会が5日に会見を開き、2015~16年に発生した流行性耳下腺炎(ムンプス)の流行で、少なくとも336人がムンプス難聴(用語解説)と診断されたとする大規模調査の結果を公表した。同学会は今後、関係学会・団体と共にムンプスワクチンの定期接種化を国に要望する方針。
調査は耳鼻咽喉科を標榜する全国の5565施設を対象に実施(回答率64%)。ムンプス難聴と診断された336人のうち、詳細を把握できた314人を検討したところ、約8割に当たる260人に高度以上の難聴が後遺症として残っていた。両側難聴となったのは14人で、うち11人は両側に高度以上の難聴が残ったため、人工内耳の植え込みや補聴器装用を余儀なくされていた。難聴の発症年齢別にみると、10歳未満が151人と約半数を占め、20~40代も82人に上った。同学会は「予防接種を受けていない小学校低学年とその親の世代の発症が特に多い」とみている。
ムンプスワクチンは1989年にMMRワクチンとして定期接種に導入されたが、接種後の無菌性髄膜炎が多数報告され、93年に接種が中止。それ以降は単独の任意接種ワクチンとなり、接種率は40%程度となっている。同学会乳幼児委員会の守本倫子委員長は「SNSなどで親の間に『免疫をつけるために自然罹患したほうがよい』といった怪しい情報が拡散し、接種率低下の一因となっている」と問題視。「防ぎうる難聴をなくすには定期接種化が必要だ」と訴えた。