子ども虐待への初期対応は子どもを生命の危険から守ることを目的とする
虐待の対応は家族支援につなげることであり,推定無罪ではなく「疑わしきは行動を起こす」ことが必要である
虐待の対応は一機関で抱え込まず,連携が大切である。連携では医療機関としての責任を果たすことが重要である
近年の子ども虐待相談数はいまだに増加の一途をたどり,虐待死事件報道の日常化も続いている。しかも,医療機関を受診する虐待が疑われる子どもは0歳代が多い。頭部外傷や成長障害などの命に関わる虐待が多いという特徴があり,虐待死の子どもの統計と一致する傾向がある。つまり,医療機関を受診する虐待が疑われる子どもは虐待死の危険が高いケースが少なくない。しかし,虐待を受けることによる子どもの危険は死亡だけではない。ほかの危険として以下のようなことも挙げることができる。
虐待を受けて障害を残す子どもも少なくない。さらに,発達の重要な時期,つまり乳幼児期に虐待を受けたことによる心理的影響により年齢が長じて精神障害を抱える危険は高い。その影響もあり,虐待を受けた子どもはその行動パターンにより虐待やそのほかの被害を受ける危険も高く,一方で,自分より力の弱い者に対して攻撃性が高まって加害に至る危険もある。その結果,虐待の世代間連鎖につながることもある。これらの危険から子どもを守るために医療が役割を果たすことが求められている。
子ども虐待の対応の目的は,前述したような危険,つまり,①生命の危険,②障害を残す危険,③精神障害に至る危険,④被害を繰り返す危険,⑤加害に至る危険,から子どもを守ることである。したがって,虐待が疑われるときには,医学的に必須ではなくても入院させるなどして,評価することも必要になる場合がある。虐待の対応では常に,「子どもの安全を守る」よう立ち返って対応を考えることが重要である。
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