昨年10月に福岡市の有床診療所で発生した火災を受け、国土交通省は5日、全国の医療機関に緊急実施した防火設備点検調査の結果を公表した。10.7%の医療機関で建築基準法違反が見つかった。国交省は自治体を通じて違反是正を要請している。
調査は建築基準法で耐火建築を求められている病院・有床診療所1万6087件を対象に昨年10月〜今年1月に実施。建築基準法違反が判明した10.7%(1724件)のうち、最も多かったのは防火戸など防火設備が作動しなかったケースで、910件に上った。次いで、必要箇所に防火設備が設置されていなかったのが430件、常時閉鎖しなければならない防火戸が開いていたのが408件、防火設備の作動の障害となる場所に物品を放置していたのが362件、煙や熱感知器の未設置が152件─などの違反が判明。このほか、無届による増改築も541件(3.4%)に上った。
建築基準法では建築物の所有者に対し、有資格者に増築の有無や防火設備の設置状況、防火戸作動の有無などを点検させて、その結果を定期的に報告することとしているが、その実施範囲は各自治体に委ねており、福岡市ではその対象から診療所を除外していた。
そのため国交省は現在、安全の確保を徹底すべき一定の建築物に対し、全国一律に定期報告制度の対象とする方向で検討しており、制度見直しを盛り込んだ改正建築基準法を今国会に提出する予定。