日本放射線事故・災害医学会年次学術集会が16日に都内で開かれ、今年6月に日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで発生した放射線事故で内部被ばくした作業員の医療について緊急企画が行われた。
事故は6月6日、作業員5名がプルトニウムとウランが入った貯蔵容器を点検していた際、樹脂製の袋が破裂したことで発生。5名は翌日から量子科学技術研究開発機構(量研)に入院して医療処置を受けた。7月には量研の推計により、内部被ばくの預託実効線量(用語解説)は、「100mSv以上200mSv未満」1名、「10mSv以上50mSv未満」2名、「10mSv未満」2名と公表された。
緊急企画に登壇した原子力機構の百瀬琢麿氏は、5名の体調に特段の変化はないことを報告。内部被ばくの原因については、「破裂時に直接浴びたプルトニウム等の粒子と顔面に付着した汚染がマスク面体と顔面の隙間に入り込んだため」と推定。今後、作業員と家族のケアを継続する方針を示した。
量研の明石真言氏は、事故当日からプルトニウムを除去するキレート剤を投与したことを説明。その上で、今回の経験を踏まえ、「非常に難しいと感じたのが、退院や社会復帰の時期」と指摘。「我々の機構や文科省の中に『核燃料物質に汚染された人を簡単に社会に帰すのはいかがなものか』という意見がある」と述べ、体表面の汚染がなく、尿中排泄量も問題がないと判断していることを社会に公表することで「差別や偏見が起きないようにしたい」と話した。