【2014年2月収録】
インフルエンザが本格的な流行に入った。菅谷憲夫氏は、「5年前の新型インフルエンザAH1pdm09がパンデミックを起こす可能性がある」として注意を呼びかけている。今季の状況と対策について話を聞いた。
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AH1pdm09は今、季節性インフルエンザと捉えられているが、2009/10年にしか流行していない。罹っていない人がたくさんいて、ウイルスもほとんど変化していないので、2回目のパンデミックを起こす可能性があると考えて対処していただきたい。
米国で今まさに2回目のパンデミックが起きている。CDCは昨年、警報を出していた。
日本の5年前の流行では2200万人の患者が出たが、その大半が小中学生と高校生だった。慶大保健センターの川合らの調査によると、2009/10年当時、小中学生と高校生の約50%がAH1pdm09に罹患している。したがって、この年齢層に大きな流行は起こらず、むしろ流行を防ぐ防波堤効果がある。65歳以上も免疫があるので、大きな流行はない。
一方、大学生と成人は当時約10%しか発症していないため、今の20〜30代の若年成人、40〜50代の中年層に流行が起こり、重症化する危険がある。タミフル等の治療をしなければ重症ウイルス肺炎となるだろう。
一番心配なのは妊婦。また、30前後の若手医師、看護師も罹りやすく、院内感染が起こりやすい。2010年以降に生まれた5歳以下の低年齢層にも免疫がない。
喘息の既往のある患者や喘鳴が起きている患者を吸入のノイラミニダーゼ阻害薬で治療することは禁忌。耐性ウイルスが少数例発生したという段階で、タミフルやラピアクタの使用を控えるといった状況ではない。
(聞き手:井上美幸)
●回答のポイント●
▷AH1pdm09が2回目のパンデミックを起こす可能性がある。
▷5歳以下の低年齢層、20〜30代の若年成人、40〜50代の中年層は免疫がなく重症化の危険。妊婦も危険。
▷若手医師、看護師も罹りやすく、院内感染が起こりやすい。