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【書評】コウノメソッド流 認知症診療スピードマスター

No.4875 (2017年09月30日発行) P.77

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2017-09-28

最終更新日: 2017-09-26

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認知症の人が年々増加している。地域包括ケアシステムの実態として、今後は認知症関連の医療・介護が柱となる。そうした状況の中、河野和彦先生は既存の認知症医学の枠を超えた新しい考え方を「コウノメソッド」として提唱し、書籍、研究会、講演、ブログを通じて発信されてきた。私はコウノメソッドと出会い、それを実践することで、論より証拠ではないが、従来の教科書では解決できなかった難渋例をほとんどすべて落ちつかせることができた。自分の認知症診療が激変した。患者さん本人と家族に非常に感謝されるので楽しくてしょうがない。町医者の私にも「ここまで良くすることができるんだ」と大きな自信を与えてくれた。さらに、パーキンソン病をはじめとする、いわゆる神経難病にも本格的に取り組むきっかけとなった。

「コウノメソッドを学びたいがどうすればよいか」という医師からの相談をよく受ける。確かに、河野先生の考え方は斬新なので最初が肝心だ。書籍を読もうにも、既に数多く出版されており選択にとても迷う。メソッドは年々改変されているので、できれば最新刊が望ましい。そこでお勧めしたいのが、この「コウノメソッド流 認知症診療スピードマスター」である。河野先生は常々「素人こそ宝だ」と仰っているが、まさにその通りだ。認知症診療はもはや診療科を問わず、一般のかかりつけ医や在宅医にとって必須科目である。

本書は、書名にあるように最短距離で効率良くコウノメソッドを学ぶことができる。また、フルカラーの200ページとコンパクトで読みやすい。内容は概要編と実践編にわかれ、実践編には「問診マスター」「検査マスター」「CT読影マスター」「処方マスター」など、それぞれのエッセンスが凝縮されている。ぜひ、本書を入門書として活用して頂きたい。あるいは、既にコウノメソッドを実践されている先生には、総まとめの書として復習に活用してほしい。可能であれば「コウノメソッド流 臨床認知症学」や「コウノメソッドでみる 認知症の歩行障害・パーキンソニズム」に進んで理解を深めて頂きたい。目の前の患者さんと家族の笑顔こそが、医師の道を選んだ喜びであることを実感できるはずである。

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