経口補水液(ORS)の組成は,ナトリウム(Na)とブドウ糖の比率が重要である
経口補水療法(ORT)に加え,正しい生活指導を行う
子どもに対しては,ORSの味と飲ませるタイミングが大切である
わが国のORSは医療的背景もふまえて組成を配慮している
経口補水療法(oral rehydration therapy:ORT)は1945年に初めて報告されたが,その当時は高い糖濃度の経口補水液(oral rehydration solution:ORS)であったため,高ナトリウム(Na)血症が多数報告されて中止となった1)。1960年代には,コレラによる脱水の治療において,改良されたORSと経静脈輸液は同等の効果を持つことが示された2)3)。コレラによる腸炎では,食塩水は吸収されずそのまま便に排出されるが,食塩水とブドウ糖の混合液は80%吸収する4)。そのため,ORSが効果を発揮する上ではNa‐グルコース共輸送が重要であると考えられた。当時,世界保健機関(world health organization:WHO)はORSの組成をNa 90mEq/Lと高く設定していたが,ORSの浸透圧を下げると下痢も減るため5),浸透圧を311mOsm/Lから245mOsm/Lに,ブドウ糖を111mmol/Lから75mmol/Lに,Naを90mEq/Lから75mEq/Lにして,Naとブドウ糖の比率を1:1とした。現在,Naとブドウ糖の比率は1:1~2が推奨され6),米国小児科学会(American Academy of Pediatrics:AAP)は1:1~2を超えないように勧告している(表1)。
その他,乳幼児に対しては母乳が推奨されており7),ミルクは稀釈しても治癒に影響しないことなどが過去に報告されている8)。詳細は「小児急性胃腸炎診療ガイドライン」(2017年)を参考にされたい。
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