(福岡県 S)
抗PD-1/PD-L1抗体に代表される免疫チェックポイント阻害薬は,有効性が科学的に証明されたがん免疫療法です1)2)。しかし,奏効しない症例も多く認められ,効果を予測するバイオマーカーが必要とされています。PD-1をターゲットにした治療ですので,PD-1と結合する相手方であるPD-L1に注目したのが「PD-L1の発現を免疫染色で検討する」という試みです。
そして,抗PD-1抗体であるペムブロリズマブを進行非小細胞肺癌の一次治療として使用する際には,腫瘍におけるPD-L1免疫染色の有用性が報告されています2)。ただし,同じ抗PD-1抗体であるニボルマブを進行非小細胞肺癌に用いた他の臨床試験では,PD-L1免疫染色で患者群を選別しても生存曲線はクロスしたままでした1)。つまり,上皮増殖因子レセプター(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異のような決定的な効果予測バイオマーカーではありません。
ご質問にあるようにPD-L1は動的に変化しますし(後述),同じ腫瘍でも場所によって発現がまったく異なること(腫瘍内の不均一性)も報告されています3)。さらに最近ではPD-L1は,腫瘍細胞だけではなく抗原提示細胞などにも広く発現しており,腫瘍細胞以外のPD-L1も抗PD-1/PD-L1抗体の治療効果に重要であることが報告されています4)。
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