SUMMARY
健康を規定する要因の半分以上は社会的要因であるとされ,その社会的要因のことをsocial determinants of health(SDH:健康の社会的決定要因)という。実臨床の中で患者のSDHに注目することは重要であり,社会的問題を拾い上げて特定していく一助となるのが,social vital signsである。
KEYWORD
social vital signs(SVS:社会的バイタルサイン)
人間は社会的存在であり,その状況に関する情報や兆候のことを指す。SVSに異常があるとき,社会的問題による生命の危機,ないしは生活の危機が示唆され,患者の社会的問題に気がつく契機となる。
PROFILE
岡山協立病院で初期臨床研修を修了後,2019年より岡山家庭医療センター総合診療専門医研修専攻医,ならびに岡山大学大学院医歯薬学総合研究科社会環境生命科学専攻総合内科学博士課程。
POLICY・座右の銘
足るを知る者は富み,強めて行う者は志有り
人々の健康を規定する要因の半分以上は社会的要因であるとされ,その社会的要因のことをsocial determinants of health(SDH:健康の社会的決定要因)という。患者中心の医療の方法や生物-心理-社会モデルなどで強調されているように,患者の社会的背景に注目して診療を行うことの重要性については言うまでもない。実際に複雑性が高い事例に直面すると,具体的にどのような社会的問題を抱えているのか,患者のSDHに注目する必要のある場面は実に多い。
social vital signs(SVS:社会的バイタルサイン)は北海道勤労者医療協会・堀毛清史先生が発案した概念で,「人間は社会的な存在であり,その状況に関する情報・兆候」のことである。患者の呼吸数や血圧といった(医学的)vital signsに異常があるとき,我々はその患者が生命の危機に瀕していることを察する。同じように,SVSに異常があるとき,社会的問題による生命の危機,ないしは生活の危機が示唆され,患者の社会的問題に気がつく契機となる。
SVSは,患者のSDHに視点を向け,患者の社会的問題を拾い上げて特定(社会的診断)していく一助となり,その問題への対応策を検討することにつなげることができる。