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ポリファーマシーをいかに減らすか─「減らす」ことはあくまで手段であり,目的ではない[プライマリ・ケアの理論と実践(123)]

No.5091 (2021年11月20日発行) P.12

矢吹 拓 (国立病院機構栃木医療センター内科医長)

登録日: 2021-11-18

最終更新日: 2021-11-17

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SUMMARY
ポリファーマシーは患者の治療負担になりうるが,必要性が高い薬剤の組み合わせであることも多く,減らすべきか慎重に検討する。薬剤を減らす場合,症状や減薬しやすさなどから優先順位をつけ,減薬後も適切なモニタリングを行う。

KEYWORD
ポリファーマシー
高齢者を中心に薬剤を複数飲んでいる状態。定義は明確ではないが,5種類以上内服している状態を指すことが多く,特に多疾患併存患者では該当していることが多い。

矢吹 拓(国立病院機構栃木医療センター内科医長)

PROFILE
2004年群馬大学卒業。国立病院機構東京医療センターで総合内科の後期研修を行う中で勉強会を通してEBMと出会う。当初は面倒で大変な印象だったが,徐々に日常診療になくてはならないものに変わりつつある。日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医,日本内科学会総合内科専門医・指導医

POLICY・座右の銘
普通の医者になる

1 ポリファーマシーは本当に減らすべきなのか?

multimorbidity(多疾患併存)の文脈で語られるポリファーマシーは,ある種の必要悪とされている。疾患数が増えれば,それぞれの疾患に対して推奨される処方薬が増えポリファーマシーになるのは仕方ないかもしれない。もちろん,ポリファーマシーは薬剤有害事象を増やし,薬物相互作用を増加させ,服薬アドヒアランスを下げるなど,患者にとってネガティブなアウトカムと関連している。

しかし,ポリファーマシーに介入することで患者アウトカムが改善するかどうかは一定の見解を得ていない1)のが現状であり,薬を減らすアプローチが良いことなのかもよくわかっていない。「いかに減らすか」を考える前に,「本当に減らすべきなのか」を考える必要がある。

近年,高齢者に対して行われているランダム化比較試験の中には,multimorbidityかつポリファーマシー状態の患者に薬剤を追加することで,死亡を含めた患者アウトカムを有意に改善した研究がある。

たとえば,高齢の高血圧患者の血圧を厳格にコントロールする介入を行ったSPRINT研究2)では,ベースラインの併存疾患は3.6個で,全体の40.3%がポリファーマシーだったが,薬剤追加介入の結果,心血管疾患や死亡が有意に減り,薬剤数も平均1剤増えるという結果であった。必要な薬剤であれば,ポリファーマシー状態の患者にも追加する必要があると言えるだろう。

さらに,ポリファーマシー患者ほど必要な薬剤が処方されていない“underuse”という概念も重要であり,処方の適正化という視点が重要である。

もちろん,処方されている薬の中には,必要性の乏しい薬剤や有害事象が出ている薬剤,処方カスケードをきたしている薬剤などがあるかもしれない。ひとつひとつの処方内容を丁寧に吟味していく必要がある。少なくとも「減らす」ことはあくまで手段であり,目的ではないのである。

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