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BCGの瘢痕が残らない方法

No.5082 (2021年09月18日発行) P.52

宮津光伸 (名鉄病院予防接種センター顧問)

登録日: 2021-09-17

最終更新日: 2021-09-14

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BCGの瘢痕が気になります。瘢痕の残らない方法はないものでしょうか。ご教示下さい。(福岡県 S)


【回答】

【出血するような強すぎる押圧をしないように】

現行のわが国のBCG接種法(押圧法)は瘢痕が残りにくくするために改良された方法です。以前は皮下注でしたから潰瘍を形成して10 mmほどの瘢痕が上腕の肩のほうに残っています。50~60歳代以上の人にみられます。アジアなど結核高蔓延国ではBCGを今でも出生直後にこの方法で接種しています。

1967年(昭和42年)から局所反応を軽減する目的で管針による押圧法に変更されました。さらに当時はツベルクリン反応が陽転するまでしつこく最大5回のBCG接種をしていました。乳児期と小学1年生時と2年生時,そして中学1年生時と2年生時です。ツベルクリン反応の判定方法にも問題があり,紅斑8~9mmでも陰性とされて追加接種されるため,より派手に瘢痕が目立ちました。本来は海外のように細胞性免疫を確認するためには,紅斑(erythema)ではなくて内側の膨疹・硬結(induration)で5mm以上を陽性と判定すべきだったと考えます。

押圧法になっても,しばらくは同様な接種が続けられていました。上腕三角筋部位の肩に近い位置にまで接種されるとケロイド形成を伴いやすく,気になる瘢痕が残っている人もいます。2003年にツベルクリンを廃止して直接BCG法で4歳未満の乳幼児期に1回とされ,2005年からは乳児早期の3~5カ月に1回とされ,2013年からは現在の1歳未満(推奨は5~8カ月)に1回になりました。

BCG痕を残さないのではなく,きれいな接種痕を残すようにします。瘢痕が残りやすい強すぎる押圧はすべきではありません。多くの先生方は18箇所の針跡から出血するような接種をしているようですがこれが間違いです。出血するような強すぎる押圧は皮内法ではなくてほぼ皮下注になっています。針跡それぞれが小さな潰瘍を形成してくることになります。これでは押圧法にした意味がありません。強すぎると管針の○が赤く膨れ上がってコッホ現象を疑うように腫れます。多くのコッホもどき反応がこれです。

上手なBCG接種方法は,①接種部位の皮膚を腕の下から握って緊張させて,②管針をシャチハタスタンプのように持って,③軽く均等に○を付けることです。9個の針は管針の土手部分からわずかに出ているので,軽い押圧でも○が皮膚に瞬間的に残ればきれいに皮内に刺さり,必要なBCG液を刺入させます。上下の接種痕で1~2箇所に微かに血が滲む程度がきれいなBCG痕をつくるコツです。④接種後にはBCG液を管針のツバで○の外に押し出して,⑤固く絞った酒精綿で余分な液を拭い取ります。すぐに乾燥しますから袖を戻して終了です。

BCG液を接種部位に集めてもまったく無意味です。衣類に付着したり皮膚感染の危険があります。そして1~2カ月後にその痕を確認して下さい。強さのコツが掴めるようになります。当センターのホームページ(http://www.meitetsu- hospital.jp/kakuka/yobou.html)にBCGの準備と接種の動画があり,PDF資料にもその説明が載せてありますから参照下さい。きれいな接種痕を残すようにしてください。

【回答者】

宮津光伸 名鉄病院予防接種センター顧問

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