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心血管系疾患やCKDを有する患者へのNSAIDsの使用は避ける[Choosing Wiselyで日常診療を見直す(9)]

No.5014 (2020年05月30日発行) P.28

小山雄太 (吉祥寺あさひ病院)

登録日: 2020-06-01

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    Avoid nonsteroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)in individuals with hypertension or heart failure or CKD of all causes, including diabetes.
    (American Society of Nephrology:April 4, 2012)

    リスト:日本語訳

    高血圧や心不全を有する患者,あるいは糖尿病を含むすべての原因による慢性腎臓病(CKD)患者では,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用を避ける。
    (米国腎臓学会:2012年4月4日)

    米国腎臓学会はNSAIDsの安易な使用差し控えを喚起

    米国腎臓学会が2012年に発表した,腎疾患に関する「5つのリスト」の1つでは,NSAIDsの安易な使用を差し控えるように注意喚起されている。

    リストの注釈は次のようになっている。「筋骨格系疼痛に対する薬物療法で用いられるNSAIDs(COX-2選択的阻害薬を含む)は,血圧を上昇させ,降圧薬の効果を弱め,体液貯留と腎機能低下をもたらす。アセトアミノフェンやトラマドール,麻薬性鎮痛薬の短期使用などの薬剤は,効果もNSAIDsと同等であり,より安全に使用できるだろう」。

    NSAIDsは血圧上昇などに関与

    NSAIDsはCOX-2阻害薬かどうかにかかわらず,正常血圧者および高血圧患者の血圧上昇に関与する。同時にカルシウム拮抗薬以外の降圧薬の効果が減弱するとされており1)2),日本でのsmall studyでも各種降圧薬の効果がNSAIDs併用で減弱すると報告されている3)。一方,アセトアミノフェンは血圧に対する影響はNSAIDsよりは弱い。

    NSAIDsは同時に,心不全患者に使用すると症状悪化および死亡のリスクとなることが知られており,さらに心筋梗塞や心不全による入院や死亡のリスクは用量依存性に上昇するとされている。そのため,NSAIDsを処方する際には,それがCOX-2選択性なのか非選択性なのかにかかわらず,リスクベネフィットを勘案しなければならない4)5)

    腎に対しては,NSAIDsは糸球体濾過量(GFR)を急激に低下させることがある。またナトリウムや水の貯留をきたし,前述したように血圧上昇をもたらすなどして腎機能低下およびCKDの進行に関与する6)

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