Cough and cold medicines should not be prescribed, recommended or used for respiratory illnesses in young children.
(American Academy of Pediatrics)
幼少時の呼吸器感染で,咳止めやかぜ薬を処方すべきでないし,また勧めたり,使用すべきでない。
(米国小児科学会)
米国小児科学会の主張は明確である。乳幼児に対してかぜ薬は使うべきでないと。これに対し,わが国においては,小児のかぜに対して大量のかぜ薬や抗菌薬が処方され,薬局でも大量の小児向けの総合感冒薬なるものが売られている。筆者自身も,乳幼児に対して,大量の抗ヒスタミン薬や咳止めを処方してきた過去がある。これはきわめて異常な事態であるが,多くの人がこの問題から目を背けているように思われる。
医療従事者側の問題だけではなく,子どものかぜを心配する親の問題でもあることが状況を悪化させている。「咳や鼻水で苦しんでいる子どもを放っておけますか?気休めでいいので薬を出して下さい」などと言われると,短時間での説明も困難で,ついつい「薬を出しておきますから」と片付けてしまうことが多いのが現実である。
乳幼児に対する咳止め,鼻水止めを含むかぜ薬の効果ははっきりせず,副作用があることは明らかである1)〜5)。乳児の原因不明の死亡とかぜ薬の関係を示す研究もある6)。90例の予期せぬ乳児死亡のうち原因が明らかな窒息,外傷を除く48例の中で,剖検,中毒情報のある21例中10例がかぜ薬を内服していたという症例シリーズ研究である。自然に治るかぜに対して,死亡のリスクを冒してまでかぜ薬を投与するという選択肢はないように思われるが,今現在でも,多くの小児のかぜ患者に対し,医師がかぜ薬を処方し,患者の両親もそれを要求するという状況が延々続いている。止まる気配もない。外来患者のお薬手帳を見せてもらうと,かぜ薬のオンパレードである。「最小限の薬」という視点すらなく,4種類5種類の薬が処方されている場合も少なくない。
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