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特集:内科医が知っておくべき移行期医療の実際

No.5173 (2023年06月17日発行) P.18

亀田 誠 (大阪はびきの医療センター小児科主任部長)

登録日: 2023-06-16

最終更新日: 2023-06-15

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1988年大阪大学医学部卒。91年大阪府立羽曳野病院(現:大阪はびきの医療センター)。専門は小児アレルギー学。「小児気管支喘息治療ガイドライン2017」から思春期・青年期・移行期医療の章を担当。

1 人が大人になるということ
人は自然に大人になるわけではない。大人になる過程できわめて重要なのが思春期であり,この時期に肉体的にも精神的にも大きな変化が生じる。それと同時に,社会の中で生きていくことを学ぶ必要がある。

2 移行期医療が必要な理由
小児期医療の進歩によって小児期発症の慢性疾患,あるいは合併症を持ちながら思春期・成人期を迎える患者が増加し,移行期医療がクローズアップされるようになった。移行期医療では,医療者側が小児期診療に慣れた(馴染んでしまった)患者,家族を成人科診療に適応できるようにする必要性があり,また,適切な診察の場を提供する観点からも患者の人格的成熟に即した適切な医療環境を提供しなければならない。

3 移行期医療とトランジション,成人移行支援
日本小児科学会は「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」の中で,「移行期医療」「トランジション」「成人移行支援」の3つの言葉を定義している。3つの言葉はよく似てはいるが異なる概念であり,移行期医療を理解する上ではその違いを理解することは意味がある。
移行期医療の基本的概念は①自己決定原則,②年齢(加齢)により変化する病態や合併症への対応,③人格の成熟に基づいた対応と年齢相応の医療,の3つである。また「成人移行支援」は米国における「health care transition」とほぼ同義であり,わが国での医療と健康管理(身体的,心理的,社会的)を包括した概念である。

4 移行期医療に関連する重要な概念
成人期医療に関連して「ヘルスリテラシー」と「セルフアドボカシー」という概念もきわめて重要である。これらは医療に限定される概念ではなく,人が成人に成長するに向けて獲得すべき能力でもある。ヘルスリテラシーは日常生活の中で健康に関する適切な判断を行うために必要な能力を指し,セルフアドボカシーは個人の利益を促進するために,効果的にコミュニケーションし,理解し,自分の信念を主張する個人の能力と定義される。セルフアドボカシーには3つの要素が含まれている。自分のニーズを理解すること,利用可能な支援を理解すること,そしてニーズを他人に伝えること,である。

5 医療者に求められる具体的な取り組み─患者の自律支援
移行期医療の中で最も重要な点は,患者-医療者の関係の変化を促して,患者自身による主体的な治療への関わりをめざすことである。

6 医療者に求められる具体的な取り組み─移行期支援プログラム
移行期医療の目的を達成するためには,開始から終了に至るまでの流れを理解しておく必要がある。移行期支援プログラムは「思春期の患者が小児科から成人診療科に移る時に必要な医学的・社会心理学的・教育的・職業的必要性に配慮した多面的な行動計画」と定義されている。

7 転科についての今後の課題
最後に移行期医療の中で転科に関する課題について考えたい。今後の移行期医療の充実に向けて読者の皆さんとともに考え,取り組むべき課題であると考える。

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