日本医師会の中川俊男副会長は8日、厚生労働省が同日の中央社会保険医療協議会で報告した「第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」について、「近年になく、特に病院で経営状態が悪い」との受けとめを示した。これを踏まえ、2018年度診療報酬改定については「限りなくプラス改定を求める」と強調した。
調査結果を受け中川氏は、アベノミクスの成果をまとめる際に起点とする2012年から動向をみると、診療報酬本体改定率は賃金指数の推移と同水準だと指摘。「病院・診療所の従業者数は増加しており、増加分をまかなう原資はない。この状況から医薬品、医療機器、ICTを含め、医療技術のイノベーションに対する投資は困難」との見解を示し、医療への適切な財源投入を求めた。
具体的に中川氏は、調査結果の中でも病院の経営状態を問題視した。「調査は2年分の定点調査で、調査ごとに客体が変わるため、経年変化を見ることはできない」と断りつつ、「病院の損益差額率は過去3回の調査で最低水準」と指摘。一般病院の損益差額率は1.8%、税引き後利益率は1.4%に縮小することから、「この僅かな黒字では質を担保できない」と訴えた。その一方で、公立病院は莫大な税金の投入で維持している状況が続いていることから、総務省が策定した新公立病院改革ガイドラインを基に「各地域医療構想区域内で公立病院がどう立ち振る舞うかが問われている。公立病院は新改革プランを真摯に受け止め、自らの育成を考えてほしい」と主張した。