(新潟県 H)
自動車を運転中に飛び石を生じさせたことによって運転者が負う責任は,大きく分けて「刑事責任」と「民事責任(損害賠償責任)」があります。
刑事責任が問われるのは,当該行為を行った人に故意や過失が認められる場合です。道路上の小石を跳ね上げて飛び石を生じさせた場合,運転者の故意または過失がないことが通常でしょうから,住宅や車を損壊したとして器物損壊罪(刑法第261条)に問われたり,人にけがをさせたとして業務上過失致傷罪(同法第211条前段)に問われる可能性は低いでしょう。
もっとも,砂利道を疾走した場合など,道路状況から飛び石が生じうることが十分予見できて(予見可能),徐行や停止したりすることで飛び石を生じさせることを回避できたであろうと言える場合(回避可能)には,過失が認められることになり,器物損壊罪や業務上過失致傷罪,道路交通法上の安全状態確認義務違反(道路交通法第70条)等を問われる可能性が出てきます。
なお,ご質問とは離れますが,飛び石が土砂などの車両積載物によって生じた場合,その積載方法に問題があるときなどには,別途道路交通法違反とされる可能性があります。
民事責任(損害賠償責任)についても,運転者に故意または過失が認められることが必要です。したがって,上記の通り,通常の運転で飛び石を生じさせてしまったとしても,故意・過失が認められないことが多いでしょうから,直ちに修理代や治療費等の損害賠償責任を負う可能性は低いと思われます。
そして,この場合でも,砂利道をあえて高速度で走行したり,積載方法に問題があったりする等,飛び石を予見・回避することができたにもかかわらず,それを怠ったような場合には,故意・過失が認められるとして,損害賠償責任を負う可能性が生じてきます。
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