アトピー性皮膚炎(AD)乳児であってもアレルギー疾患予防のための離乳食開始の延期や食物除去は推奨されていない
ADの治療のための食物除去は,厳密な診断のもとでのみ行うべきである
血液検査(食物特異的IgE抗体価)結果のみで食物除去とは判断しない
安全な摂取量を見つけて少しずつ食べ続けることが重要である
食物アレルギー(food allergy:FA)の主な原因は腸管からの感作であると長い間考えられてきた。しかし近年,この考え方が変わりつつあり,特集①にもあるように炎症のある皮膚を介した経皮感作が主な原因ではないかと考えられるようになってきた1)。それに伴い,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)の治療法,FAの治療・予防法も考え方が変わってきた2)3)。本稿では,中でもAD乳児における,食物アレルギーの指導・予防法の変化と最新の知見を概説する。
FAは乳幼児に多く,その理由として消化管の消化吸収能が未熟なためではないかと考えられていた。そのため,FAを含むアレルギー疾患の発症予防については,一時期,食物除去をすべきという考えが主流であった。実際に2000年には米国小児科学会から,アレルギー疾患の家族歴があるアレルギー疾患のハイリスク児は,生後6カ月以降までの離乳食開始の延期,鶏卵は2歳まで,魚類,ピーナッツ,ナッツ類は3歳まで除去することが推奨された4)。しかし,この提言の中では同時に,その根拠とする研究はまだ不十分であるとも述べられていた。
その後の検討により,妊娠・授乳中の食物除去は児のアレルギー疾患予防効果はないとされ5) 6) ,離乳食に関しても,1歳未満での離乳食の摂取食品数が多いほどFAの発症が少ないと報告されている7) 。また,FAのリスクの高い食品である卵・牛乳・小麦に関しても除去を支持しないという結果が報告されている。卵に関しては,生後4~6カ月から摂取を開始するのに比べて,生後12カ月以降まで摂取を遅らせた場合,卵アレルギー発症のオッズ比が3.4倍(95%CI;1.8~6.5)であったというコホート研究が報告されている8)。魚においても,生後12カ月までに日常的に魚を摂取していると,除去に比べて4歳時点の喘息・AD・アレルギー性鼻炎を認めるオッズ比が0.76(95%CI;0.61~0.94)と有意に低かったと報告されている9)。
このような報告をもとに,2008年には,アレルギー疾患のハイリスク児だからといって,摂取開始時期を延期するのは推奨しないと各国のガイドラインが改訂された10)~12)。2014年には欧州アレルギー臨床免疫学会からFAの発症予防ガイドライン13)が発表され,この中においても,アレルギー疾患ハイリスク児の食物除去は推奨しないとされた。ただし,卵・牛乳・ピーナッツなどのアレルゲン性が高いとされる食品の摂取開始時期は,早期摂取開始が良いのか除去が良いのか,どちらに関してもエビデンスが不足しているとされていた。
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