胆囊壁肥厚を呈する疾患には,胆囊癌のほかに胆囊腺筋腫症(ADM),慢性胆囊炎,膵・胆管合流異常症,黄色肉芽腫性胆囊炎(XGC)などがある
腹部超音波検査(US)は胆囊病変の存在診断,質的診断に有用である
胆囊癌との鑑別には胆囊内腔の粘膜面が整か不整か,また連続性があるかないかが重要である
胆囊は腹部超音波検査(ultrasonography:US)にて病変の存在診断,またある程度の質的診断が可能な臓器である。そのため,日常診療において健診で胆囊壁肥厚を指摘された症例を経験することは多い。胆囊壁肥厚を指摘された場合,胆囊癌との鑑別が最も重要である。
以下,胆囊壁肥厚の原因となる疾患・病態について述べる。
胆囊腺筋腫症(adenomyomatosis of the gallbladder:ADM)は組織学的に胆囊壁内におけるRokitansky-Aschoff sinus(RAS)の増生と筋線維組織の肥厚,粘膜上皮の過形成を基本形態とする胆囊壁の肥厚性病変である。明確な組織学定義はないが,わが国では武藤1)による「胆囊壁1cm内にRASが5個以上増生し,壁が3mm以上肥厚したもの」という診断基準が一般的に用いられている。病変の広がりによって,①底部型〔fundal type(F型)〕,②分節型〔segmental type(S型)〕,③びまん型〔diffuse type,generalized type(G型)〕に分類される(図2)2)。
US,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)でADMに特徴的なRASを示唆する無エコー領域,壁内結石であるcomet like echoが描出されれば,その診断は比較的容易である。CTではRASの描出は困難であるが,壁在結石が壁内の石灰化として描出されることがあり,造影CTでは粘膜層を中心とした造影効果を認めることがある。磁気共鳴胆道膵管撮影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP)ではT2強調画像でRASが高信号を呈し,いわゆるpearl necklace signを呈する。
また,一部のADMでは胆囊癌との鑑別に難渋することがあるが,ADMではUS,EUS,CTにおいて,粘膜側面は比較的整であること,胆囊壁の最外層が保たれていることが挙げられる。しかし,各種画像検査にて胆囊癌が否定しきれない場合は胆囊摘出術も考慮すべきである。
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