好酸球性副鼻腔炎は,マクロライド少量療法や内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)に抵抗性の再発性・難治性副鼻腔炎として注目されている
全国大規模疫学調査(JESREC Study)により,難治性好酸球性副鼻腔炎を術前に診断し,重症度分類ができる診断アルゴリズムが作成された
好酸球性副鼻腔炎は,嗅覚障害,両側鼻閉,粘稠な鼻汁を特徴的な症状とし,末梢血好酸球数が5%を超える,篩骨洞優位のCT陰影,気管支喘息・アスピリン不耐症・NSAIDsアレルギーの合併を難治性因子とする
気管支喘息やアスピリン喘息を合併した好酸球性副鼻腔炎では,喘息のコントロールが重要である
慢性副鼻腔炎は,鼻腔・副鼻腔(上顎洞,篩骨洞,前頭洞,蝶形骨洞)において少なくとも8週間以上継続する慢性炎症疾患と定義されている。慢性副鼻腔炎の中には,鼻茸を有するものと有さないものとがある。鼻茸を有する慢性副鼻腔炎は,非好酸球性と好酸球性に分類される。これは鼻粘膜もしくは鼻茸組織に好酸球が有意に多数浸潤しているかによって決定される(図1)。
慢性副鼻腔炎は,マクロライド少量長期療法や内視鏡下鼻副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)などの治療法が確立したことによって,治癒率が向上した。しかし近年,これらの治療に抵抗性を示し,易再発性かつ難治性の副鼻腔炎である「好酸球性副鼻腔炎」が注目されるようになった。従来の慢性副鼻腔炎は,鼻茸組織中に好中球が優位に浸潤し,中鼻道自然孔の閉塞による感染性病変で発症するとされるが,好酸球性副鼻腔炎は,鼻茸組織中に好酸球が優位に浸潤しており,病態が異なるものと考えられている。
好酸球性副鼻腔炎は1990年代後半から増加してきており,慢性副鼻腔炎患者は約200万人,うち鼻茸などを有することによる手術対象症例が約20万人,好酸球性副鼻腔炎は約2万人と推定される。
好酸球性副鼻腔炎という概念は,春名ら1)が2001年に「難治性・易再発性の副鼻腔炎には好酸球浸潤が著しい」と提唱してから認知されるようになった。しかし実際には,好酸球浸潤が強くても予後良好な副鼻腔炎も存在し,「好酸球浸潤=難治性」とは必ずしも言い切れない。難治性の好酸球性副鼻腔炎を的確に診断し,その難治度に合わせて治療方針を決定することは重要であり,難治性の好酸球性副鼻腔炎の診断アルゴリズムを理解することが求められる。
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