肺癌に対する標準術式は,1960年にCahanによって報告された所属リンパ節郭清を含む肺葉切除とされている。95年の米国・カナダを中心としたLung Cancer Study Group(LCSG)による,Ⅰ期肺癌に対する肺葉切除群と縮小切除群のランダム化比較試験で,縮小切除群に局所再発が多いことが示され1),約半世紀の間変わっていない。区域切除や部分切除術といった縮小手術は,主として肺葉切除不能な症例(高齢者,低心肺機能等)に対して行われてきた。
しかし,近年の肺癌診断技術の向上,特に胸部薄切CT(TSCT)検査の普及と診断技術の向上により,腫瘍径20mm以下の小型肺癌や周囲にすりガラス影を伴う肺癌(GGN)が発見される機会が増加した。95年のNoguchiらによる報告2),その後の検討によりTSCTですりガラス影領域は,病理学的に浸潤性の低い腫瘍細胞の増殖,いわゆる肺胞上皮置換性増殖に対応し,すりガラス影を多く含む肺癌は,含まない肺癌に比べ明らかに予後が良好で,腫瘍の悪性度が低いことが判明した。このような症例に対し縮小手術が選択され,良好な治療成績や呼吸機能の温存が報告されている。
わが国では,Japan Clinical Oncology Group(JC OG)を中心にTSCT所見(C/T比:TSCTにおける腫瘍充実濃度径consolidationと腫瘍最大径tumorの比)に基づいた,縮小手術の標準化に向けての検討が行われている3)。
【文献】
1) Ginsberg RJ, et al:Ann Thorac Surg. 1995;60 (3):615-22.
2) Noguchi M, et al:Cancer. 1995;75(12):2844-52.
3) 青景圭樹, 他:呼吸. 2015;34(4):345-51.
【解説】
中村晃史 兵庫医科大学呼吸器外科