【質問者】
鈴木眞一 福島県立医科大学甲状腺内分泌学教授
ご質問のありました症例は若い女性ですので,最小限の長さの切開と頸部検索により右下腺のみを摘出する,いわゆるminimally invasive surgeryを希望されるかもしれません。ただし多腺腫大症例では,局在診断の感度は低下するため1)2),術前画像診断だけで右下腺のみの単腺腫大であると診断するのは,散発性腫症例に比べリスクが高いと考えます。そこで術中迅速PTH測定が可能な施設では,それを用いて,術前に局在診断された腫大副甲状腺以外にPTHを過剰産生している副甲状腺がないことを術中に確認できますので,この症例でminimally invasive surgeryを施行するのであれば,術中迅速PTH測定は必須と考えます。
過去の報告では全摘術+自家移植術あるいは亜全摘術を予定術式としてMEN1型の原発性副甲状腺機能亢進症症例に対し両側検索をした結果,3腺未満しか摘出しなかった症例の頸部再発例はやはり多いものが目立ちます3)〜5)。つまり,MEN1型の原発性副甲状腺機能亢進症では腫大腺の画像診断の感度が低下するため,他の腫大腺を見逃す結果となる場合以外でも,仮に発症した時点では単腺腫大であっても,将来的には他の副甲状腺が腫大してくるリスクはやはり低くないと考えられます。
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