第115回日本外科学会定期学術集会特別展示「メスの限界に挑戦した症例:名古屋大学腫瘍外科学教室における経験」の内容が最近出版され,大変興味深く拝読しました。その中には残存肝臓の血行再建を要する肝門部胆管癌の拡大肝切除など,形成外科なくしては成し遂げられない困難な悪性腫瘍手術も多く見受けられました。このような手術において,術前計画からの形成外科の関わり,このような手術特有の再建時の配慮(血管移植片には静脈または動脈移植片のどちらを用いるか,血流供給血管の選択や配置など),さらに術後の問題点などに関して,腫瘍外科チームとともに「メスの限界」に挑戦した名古屋大学・亀井 譲先生にご教示をお願いします。
【質問者】
今泉 督 沖縄県立中部病院おきなわジェンダー センター副センター長,形成外科副部長
親富祖勝己 沖縄県立中部病院おきなわジェンダー センターセンター長
肝門部胆管癌における肝動脈吻合は,術前に3DアンギオグラフィやCTにより切除予定の血管を確認して,グラフトが必要かどうかを確認し,必要があれば採取予定の前腕にてアレンテストを行っておきます。
まず,顕微鏡下に吻合予定の血管内腔や断端を注意深く観察します。動脈硬化や電気メスの利用により内膜が損傷していることが多く,内腔の状態を確認することは重要です。また,血管の分枝も太い糸で結紮されている場合は,それにより周囲の外膜を巻き込むことで血管に負担をかけることになり,さらに本管ぎりぎりで結紮されている場合は,分枝の内腔が本管の内腔に突出するようになり,それぞれ血栓形成の原因となります。血管に余裕があれば結紮された分枝部分より中枢側を利用しますが,そうでない場合には,丁寧に結紮糸を外して内腔を確認します。筆者らは,顕微鏡下にこの操作を行い,再度9-0ナイロンにて分枝を結紮するようにしています。
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