初期臨床研修制度の大規模改正が2020年度に予定されている。医道審議会の医師臨床研修部会(座長=桐野髙明東大名誉教授)は7日、制度見直しについて、必修科目に外科、産婦人科、小児科、精神科を復帰させて計7科目とすることなどを盛り込んだ報告書案を大筋で了承。厚生労働省はパブリックコメントを経て、3月中にも最終版を公表する方針。
臨床研修制度は、概ね5年ごとに見直されている。
必修科目を巡っては、2010年度の見直しで、多様なキャリアパスへの円滑な接続を図り、各病院で特色あるプログラムが組めるよう弾力化を実施。これ以降、必修科目は内科、救急、地域医療の3科目となり、外科、小児科、産婦人科、精神科は「選択必修」として各研修医が2科目を選ぶこととなった。
報告書案では、チーム医療の実践や患者とのコミュニケーションを含む基本的診療能力の修得を基本方針に据え、到達目標で最重視する方向を示した。これを踏まえ、2020年度以降は必修科目に、外科、小児科、産婦人科、精神科(各4週以上)を戻し、内科(24週以上)、救急科(12週以上、4週まで麻酔科に振替え可)、地域医療(4週以上)と合わせて7科目とする(図)。外科、小児科、産婦人科、精神科、地域医療については「8週以上が望ましい」とするほか、一般外来での4週以上の研修も求める。
地域医療の安定的確保に向けては、臨床研修病院の研修医募集定員を2025年度に1.05倍(19年度は1.12倍)にすることを目指す。研修医の都市集中を抑制するため、大都市圏の定員の圧縮を続ける。
都道府県の役割については、臨床研修病院の指定・募集定員の設定に主体的に関われるよう、権限を国から移譲すべきとしている。この点については、今国会への提出が予定される医療法・医師法改正案に、医師偏在是正策の一環として盛り込まれている。
マッチングに関しては、地域の病院が地域枠学生や地元出身者を早く採用できる限定選考の導入を提言。2019年実施のマッチングから、地域枠学生の選考を一般枠学生とは分けて実施する。ただし、限定選考は地域医療重視のプログラムを設ける病院のみで行い、募集定員は病院全体の2割または5人の少ないほうを上限とする。
また、診療義務を遵守しようとしない“地域枠違反”の学生については病院が採用しないよう要請。採用した病院に対しては、逸脱の程度に応じて「必要な対応を行う」とし、罰則適用に含みを持たせた。
大学病院には基礎研究医志望者を対象とした「基礎研究医養成枠」(原則1名)を設置し、一般枠とは別にマッチングを行うことが望ましいとした。研修中から大学院の基礎医学系講座で指導を受けられるようにし、研究と臨床の両立を後押しする。
このほか、臨床研修病院に対する訪問調査も見直し、改善がみられない場合は指定取消の対象にすることも提言した。