最新の米国精神医学会診断マニュアル「DSM-5」では,アルコール依存症と乱用がなくなり,両者を併せた診断名として「アルコール使用障害」が新たに用いられている。この用語の登場は,アルコール関連障害への早期対応を期待したものとも考えられる。わが国でも,「アルコール健康障害対策基本法」が一昨年6月に施行され,具体的な「基本計画」策定に向け1年半にわたる議論が関係者会議で進められてきた。その中で,わが国のアルコール依存症患者数が109万人と推計される一方で,専門治療を受けている患者数は4万人程度にすぎず,アルコール依存症患者の8割以上が過去1年以内に一般医療機関を受診しているトリートメントギャップの解消が重要なテーマとなっている。多量飲酒に伴う身体疾患が重症化し,借金を抱え失職し,家族も失ってからの治療導入では遅い。身体疾患やうつ病の治療中にいかに背後に潜むアルコール問題に早期に気づき,スクリーニングを行い,節酒効果が確認されているブリーフ・インターベンション(簡易介入),さらにアルコール依存症であれば専門治療や自助グループにつなぐことができるかが鍵を握る。
1 外来でできる早期スクリーニング
─専門治療につなげるために
筑波大学医学医療系地域医療教育学講師 吉本 尚
2 アルコールのリスク─うつ・自殺との関連
国立病院機構久里浜医療センター副院長・認知症疾患医療センター長 松下幸生
国立病院機構久里浜医療センター院長 樋口 進
3 多機関・多職種連携の実際
かすみがうらクリニック副院長 猪野亜朗