今後増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズへの対応のため、長期療養のための医療と日常生活上の世話(介護)を一体的に提供する介護保険施設として、4月から新設された介護医療院。日本慢性期医療協会は「日本介護医療院協会」を発足させ、2日に設立記念シンポジウムを都内で開催した。
日本介護医療院協会の会長に就任した江澤和彦氏は講演で、協会の理念を私案として提示。具体的には、「利用者の尊厳を保障することが最大の使命」「自立支援を念頭に置いてサービスを提供」「必要かつ良質の施設および在宅の療養を提供」「潤いのある生活感あふれるサービスを提供」「地域に開かれた交流施設として地域貢献」を掲げ、「生まれたばかりの介護医療院だが、健全に成熟するようにしていきたい」と意欲を示した。
このうち生活施設としての役割については、プライバシーの尊重を重視。2018年度介護報酬改定で設けられた「移行定着支援加算(93単位/日)」(用語解説)に言及し、「(加算による収益を)ハード面のテコ入れに使えるのではないか」との認識を示した。さらに、自身が開業する岡山県では、介護医療院に関する独自規定として、食事に地産地消を取り入れることになったと紹介し、高く評価。「生活に潤いを感じることがとても大事で、介護療養病床に間仕切りを付けて転換するだけでは(患者の)理解は得られないし、寂しい」と話した。
このほか、厚生労働省の鈴木康裕医務技監、日本慢性期医療協会会長の武久洋三氏、日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏、衆議院議員の安藤高夫氏が講演した。
鈴木医務技監は、今後高齢者が増えて家庭内の介護力がなくなることを指摘する一方、「病床数は今も数が多いので、これ以上数を増やせないし、急性期病床の集約化は将来避けられない」と指摘。その上で、介護医療院について「新しい日本の地域医療と住まいのモデルを提供することになる」と話した。
日医の鈴木氏は、2006年に厚労省が介護療養病床廃止の方針が突然打ち出したことを振り返り、「当時は(機能転換に関して)厚労省は北風路線だったが、結局転換は上手くいかなかった」と指摘。鈴木氏は、医療や介護が地域の多様なニーズに応えるためには、医療施設・介護サービスの経営者にとって魅力的な選択肢をつくり、どのような機能を選択しても経営が成り立つようにする必要性を強調した。その上で、介護療養病床の転換先として、介護医療院が創設されたことについて「今回、初めて厚労省の転換策が上手くいくかもしれない」と述べ、介護医療院の役割に期待した。
武久氏は、自身が開業する兵庫県淡路島の現状として、「在宅療養を支える診療所の医師の高齢化が進んでいる」と指摘し、「介護医療院は医療施設的な側面を持ちながら療養介護を受けることができる」として、「慢性的な人材不足にも介護医療院が一役買えるのではないか」との見通しを示した。
安藤氏は、今後、介護医療院について検討したい事項として、①施設としての医療の質と介護の質、②地域におけるニーズマッチング、③継続性がある制度設計と運用、④医療・介護従事者と財源の確保、⑤適切な加算の設定、⑥実態に即したハード・ソフトの検討―を挙げた。
なお、厚労省は3月28日に2018年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)を公表し、介護療養病床、医療保険適用の療養病床、介護療養型老人保健施設から介護医療院に転換した場合の加算や特別診療日の取扱いについて記載。その起算日は、転換前の入院日になるとした。