B型肝炎ウイルス(HBV)感染症は多彩な病態を示す。これらの病態はHBVの活動性とこれに対する宿主の免疫応答で規定されており,病期として整理されている。HBVキャリアの治療方針はこの病期により大きく異なるため,プライマリケアではまず病期の判断が重要である。
HBV活動性の評価はHBe抗原・抗体とHBV DNA量で行い,肝炎の有無から免疫応答を判断する。合併症では肝細胞癌が重要であり,たとえ安定した状態であっても定期的な肝画像検査は欠かせない。化学・免疫抑制療法を行う際は,B型肝炎再活性化の可能性を考慮した対策を講ずる必要がある。
B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus;HBV)感染症は,急性感染のみならず持続感染となることが特徴である。さらに,持続感染においては無症候性キャリア,慢性肝炎,肝硬変,肝発癌,非活動性キャリア,潜伏感染,再活性化などの多彩な病態を示す。これらの病態はHBVの活動性とこれに対する宿主の免疫応答で規定されており,病期として整理されている。HBVキャリアの治療方針はこの病期により大きく異なるため,プライマリケアではまず病期の判断が重要である。
HBV感染症の臨床では,その複雑な病態に対応するため多くのウイルスマーカーが使用されている。しかし,これが非専門医をHBV感染症から遠ざける要因のひとつとなっている。
プライマリケアではHBV活動性の評価が重要であり,特にHBV DNA量の測定は不可欠である。このため,非専門医においてもHBV DNAの定量値を評価できることが望ましい。
HBV感染症は一見複雑であるが,基本を理解すればその臨床に対応することは容易である。本稿では,HBVの活動性の評価方法とHBVの病期分類ごとの病態から肝線維化進行度の評価,HBVにおける危険な合併症の評価,B型肝炎の再活性化への注意点まで,HBVキャリアのプライマリケアを理解するために必要な項目を整理した1)。
HBVキャリアの診断においてはHBs抗原の測定が最も優れている。すなわち,HBs抗原が陽性であることは現在HBVに感染していることを示す。日常臨床では,AST・ALT値上昇のためHBs抗原の検査を受けたり,献血や検診で同検査を受けたりした結果,HBs抗原陽性を指摘されて来院する症例が多く,このような症例のほとんどはHBVキャリアである。HBVキャリアの診断ではHBs抗原が6カ月間以上持続陽性であることが基本である。しかし,臨床的に慢性であることが明らかな場合は1回の測定でもHBVキャリアと診断可能である。
HBVキャリアをみた場合にまず行うことは,①病期の判断,②肝線維化進行度の評価,③合併症の評価,④再活性化の評価,である(表1)。実際の評価では専門医に依頼すればよい項目も多いが,HBVキャリアをみる際,何を評価すべきかを知っておくことはプライマリケアでも重要と考えられる。
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