本章では、2018年度診療報酬改定について、新旧点数と厚生労働省「社会医療診療行為別調査」の算定回数により影響シミュレーションを実施し、診療所(診療科別)、在宅医療(診療所)、病院(種類別)の改定インパクトを試算した。
既存点数の改定箇所を反映した試算によると、診療所全体の改定率は▲0.26%とマイナス改定となった。本来、診療報酬本体の改定率は+0.55%(医科本体は+0.63%)とプラス改定になっているが、診療所に限ると既存点数のみでは厳しい結果になった。一方で病院全体の改定率は+0.02%とほぼ横ばいとなった。病院と診療所を合わせた医科全体の改定率を試算すると▲0.06%となり、新規設定された点数を加味しないシミュレーションの結果では、医科本体の改定率を下回る結果となった。
今回の試算によって、政策における本体部分のプラス改定を病院については確認できた一方、診療所についてはマイナスになることが明らかになった。診療所経営において本改定を経営面でプラスに転じさせるためには、地域包括診療料・加算等のかかりつけ医に関連する診療料や初診料機能強化加算の算定、在宅医療の対応等が必要となる。
次章以降で、診療所(表1)、在宅、病院それぞれの改定インパクトについてポイントを確認していきたい。
内科は、全体では▲0.23%とマイナス改定となった。内訳は、在宅医療▲0.30%(単体[以下同]▲2.61%)、処置▲0.09%(▲2.71%)、医学管理料等▲0.01%(+0.08%)、投薬+0.09%(+0.41%)、検査+0.08%(+0.48%)となっている。
内訳は、在宅医療は血糖自己測定器加算関連の減点(月20回以上400点→350点、月60回以上860点→580点、等)の影響が大きく、その他項目はほぼ横ばいとなっている。処置は慢性維持透析の減算の影響が大きい。従来は透析の実施時間に応じた3区分の評価となっていたが、今回は新たに透析監視装置台数、もしくは透析監視装置台数に対する患者数に応じた評価軸が加わった上で、全体的に点数が引き下げられている(5時間以上の場合2,310点→慢性維持透析1の5時間以上2,275点、3の5時間以上2,185点)
投薬では一般名処方加算の増点(加算1で3点→6点、加算2で2点→4点)、検査ではホルター心電図8時間超(1,500点→1,750点)の増点と血液採取(静脈)の増点(25点→30点)がプラスに影響している。
次に、今回新規設定された点数について検討を行う。地域包括診療料・加算を未算定の診療所は、今回改定で要件緩和(⇒用語解説)がなされたことを踏まえて算定を検討したい。同診療料・加算を算定している場合、初診患者に対して初診料機能強化加算が算定でき、大きなプラスが見込める。また、同診療料・加算の上位基準が新設されたことからも、政策的に同診療料・加算算定の後押しを進めていることが読み取れる。
地域包括診療料・加算を未算定の診療所が地域包括診療加算2を新規算定した場合の収益についてシミュレーションした。1日あたり初診患者数を10人、再診患者数を35人、地域包括診療加算の対象患者数を1人、月間の診療日数を20日とした。結果、地域包括診療加算2による増収効果は月当たり360点となった。また、同加算の取得により初診料機能強化加算が算定可能となる。機能強化加算による増収効果は月当たり16,000点となり、地域包括診療加算2と合わせて16,360点の増収となった。地域包括加算単体の増収効果は軽微だが、初診料機能強化加算の増収が大きく貢献する結果となった。