日本透析医学会による「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」では腎性副甲状腺機能亢進症の手術適応は「intact PTH(iPTH) 500pg/mL,あるいはwhole PTH 300pg/mLを超える場合とする」としています。ただしこれ以下の値であっても,管理目標値を上回る高リン(P)血症あるいは高カルシウム(Ca)血症が是正困難な場合,副甲状腺インターベンションの適応を検討することは妥当であるとも記してあります。
特に高P血症は透析患者の生命予後に大きく影響すると言われていますが,内科的治療ではPのコントロールが不良である一方でiPTH値が100~200pg/mL程度で,頸部超音波検査(ultrasonography:US)でも腫大腺が検出されないような症例でも手術適応はあるのでしょうか。
名古屋第二赤十字病院・一森敏弘先生にご教示頂きたく存じます。
【質問者】
日比八束 藤田保健衛生大学内分泌外科教授
iPTHが100~200pg/mL程度で,頸部USなどで腫大した副甲状腺が検出されないのに,内科的治療でPのコントロールが不良であるような場合は,ミネラル担当臓器である尿細管,腸,骨,副甲状腺のうち,腸が最も高P血症に関与していると考えます。すなわち,透析患者の高P血症は,透析不足がないという前提で考えると,摂取したPが処方されたリン吸着剤に吸着されずに腸から吸収されていることや,Pの摂取量が多いことが一番の原因です。
ご質問の症例の場合,副甲状腺摘出術(parathyroidectomy:PTx)を行ってもまず高P血症は改善しませんので,PTxの適応はありません。服薬アドヒアランスが悪い,間食が多い,インスタント食品,加工食品,プロセスチーズ,菓子,コーラ系飲料など食品添加物が多いものを摂取しているなどの原因を見つけ,繰り返し指導することが肝要と考えます。
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