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片頭痛患者から見た頭痛医療における医療連携の現状とその必要性 ［学術論文］
No.4700 (2014年05月24日発行) P.33
野田朋宏 （昭和大学薬学部生体制御機能解析薬学講座生理・病態学部門）
加藤大貴 （昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門 講師）
石井正和 （昭和大学薬学部生体制御機能解析薬学講座生理・病態学部門）
飯塚亮太 （昭和大学薬学部生体制御機能解析薬学講座生理・病態学部門）
高木麻帆 （昭和大学薬学部生体制御機能解析薬学講座生理・病態学部門）
河村 満 （昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門 教授）
清水俊一 （昭和大学薬学部生体制御機能解析薬学講座生理・病態学部門 准教授）
登録日： 2016-09-08
最終更新日： 2017-04-03
頭痛医療における薬局と病院・診療所との医療連携の現状およびその必要性について明らかにするために，片頭痛患者を対象にアンケート調査を実施した。回収率は45.5％（90／198名）であった。実際に薬局と病院・診療所との医療連携を実感できたことのある頭痛患者はわずかであった。患者の多くは薬局と病院・診療所との連携はできていないと感じている一方で，多くの患者が薬局も含めた医療連携の必要性を感じていた。またその際，薬局薬剤師から医師へ，服薬歴，既往歴，頭痛の症状などを情報提供すべきだと感じていることが明らかとなった。
1. 不適切なOTC薬服用を医療連携で防止
頭痛は薬局に来局する患者の訴えの中で最も多く，特に片頭痛，緊張型頭痛，群発頭痛などの慢性頭痛は日常生活に支障をもたらし，患者のquality of life（QOL）を大きく低下させる要因となっている。中でも片頭痛は働き盛りの若い世代に集中しているため，病院や診療所を受診せず，薬局やドラッグストアで販売されているOTC（over-the-counter）薬ですましている場合が多い1）。片頭痛は適切な診療や治療を受けずに，OTC薬で自己管理していると，薬物乱用頭痛（medication overuse headache：MOH）を合併することがある2）3）。
MOHは慢性頭痛の中でも特に片頭痛患者で合併することが多く，鎮痛薬が無効となり過剰に服用してしまうことで誘発される難治性の頭痛である2）。MOHは原因薬物の服用を中止することで改善が期待できるが，単に中止した場合，患者は痛みに対する不安から再度OTCの鎮痛薬を服用してしまう場合が多いため，頭痛外来などの専門の医療機関で患者個々の臨床的背景に合わせたテーラーメイド治療を行う必要がある2）。MOH発症を未然に防ぐためにも，片頭痛と疑われる患者が来局した際には，OTC薬で対応可能な軽症であればセルフメディケーションのサポートでよいが，中等度や重度の片頭痛患者であれば受診勧奨の必要がある。特にMOHのような難治性の頭痛であれば，ただ単に医療機関の受診を勧めるのではなく，頭痛専門医のいる頭痛外来，神経内科などの受診を勧めることが重要となる。
保険薬局（以下，薬局）は医療提供施設として位置づけられ，地域医療を担う医療機関の1つとしての薬局を含めた医療連携が注目されている4）。最近，インターネットでのOTC薬販売がほぼ全面解禁となるなど，OTC薬販売の環境は大きく変わりつつある。消費者にとっては購入が便利になる一方で，MOHなど不適切なOTC薬服用が原因となる疾患の患者が増えることが危惧されることから，薬局も含めた医療連携がますます重要になると思われる。筆者らが2008年に実施した調査では，頭痛専門医と薬局薬剤師ともに頭痛医療において両者が連携する必要性を認識していたが，実際に頭痛患者に受診を勧めた経験のある薬剤師は約2割にとどまっていた5）。したがって，頭痛患者にとって，病院と薬局の医療連携は十分に機能していない可能性がある。
そこで，本研究では薬局でOTCの鎮痛薬を購入する機会が多いと思われる片頭痛患者を対象に，患者側から見た頭痛医療における医療連携の現状を把握し，今後の課題を明らかにすることを目的にアンケート調査を実施した。
2. 片頭痛患者を対象としたアンケート
2012年12月から2013年2月に，昭和大学病院および昭和大学病院附属東病院の頭痛外来で片頭痛と診断された患者を対象とした。片頭痛は国際頭痛分類第2版（ICHD-Ⅱ）に基づき頭痛専門医が診断した。本研究は，昭和大学薬学部倫理委員会の承認を得て実施した。
アンケートは選択式と記述式を併用した。外来受診日にアンケートを配布し，郵送にて回収した。なお，回答者の個人情報を保護するためにアンケートは無記名とした。
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