「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(通称:次世代医療基盤法)が5月11日に施行された。同法は、国に認定された民間事業者が複数の医療機関から患者の診療情報の提供を受け、本人を特定できない状態に加工した上で、研究機関や企業に提供することができるようにするものだ。法律制定の背景や医療機関における情報の取り扱いの留意点を整理しよう。
現在、投薬・検査・治療といった診療情報は患者が受診した医療機関が別々に保有している。これらの情報は、臨床研究など特定の目的がある場合を除き、医療機関同士でも共有されない。地域医療連携ネットワークが稼働している地域では、医療機関の間で患者情報がやり取りされることがあるが、診療連携以外での利用や第三者提供は想定していない。
一方、政策面においては、医療に関連する情報の連結・統合が重要課題となっている。日本は国民皆保険で、レセプトや特定健診等の情報を集積するナショナルデータベース(NDB)が整備されており、医療ビッグデータを収集・解析する素地は既にある。しかし、日本の医療提供体制は民間が負うところが大きく、保険制度も分立しているため、患者情報は分散している。こうした事情もあって、ビッグデータの解析結果を診療ガイドラインや政策決定に反映する試みは、まだ緒に就いたばかりだ。
次世代医療基盤法はこうした現状を踏まえ、医療分野のビッグデータ研究を促進すべく作られた。