上記8週を1コースとして,明らかな病状の進行や継続不能な有害事象がない限り繰り返す。
■切除不能・再発胃腺癌。
■主要臓器機能が保たれていること(以下が目安)。
■Grade 3以上の有害事象で最も頻度が高いのは好中球数減少である。好中球数減少は自覚症状に乏しく,あらかじめ患者に説明しておく。38℃以上の発熱を認める時には必ず病院へ連絡できる体制を整えておく。
■Grade 3以上の好中球数減少を認めた場合には,薬剤の減量または休薬を考慮する。
■発熱を伴わない好中球数減少に対しては, ルーチンなG-CSF製剤の投与は推奨されない。発熱性好中球減少症に対しては,入院にてG-CSF製剤および静注抗菌薬の投与を行う。好中球数1,000/μL未満で38℃以上の発熱が出現するか,好中球数500/μL 未満が確認された時点からG-CSF投与を考慮する。全身状態が良好な低リスク群(MASCCスコア21点以上)に対しては,経口抗菌薬〔NCCNガイドラインではシプロフロキサシン500mg 8時間ごと+アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム配合(2:1)(オーグメンチン®)125/500mg 8時間ごと経口投与を推奨3,4)〕による外来治療も選択肢のひとつとなるが,患者に対する十分な説明や理解,近隣病院のサポート体制などを考慮して対応する必要がある5)。
■Grade 4の白血球減少,好中球数減少,Grade 3以上の発熱性好中球減少症を認めた場合,次回は5-FUを1レベル減量して投与する。
■腸管粘膜は活発に細胞分裂を繰り返しているため,抗癌剤の影響を受けやすく,腸管粘膜上皮細胞の障害が下痢の主な原因となっている。
■感染性腸炎の除外は必須である。Grade 1〜2の下痢で合併症がなければ,十分な水分を摂取させる。Grade 2の場合は,下痢が改善するまで化学療法は中止する。治療の第一選択薬はロペラミド塩酸塩であり,ガイドラインでは初回4mgでその後4時間ごと,もしくは下痢のたびに2mg内服とされているが6),実際には1〜2mgを頓用で使用することで改善することが多い。
■ロペラミド塩酸塩が無効もしくは重篤な症例では,オクトレオチド酢酸塩の使用を検討する。しかし,下痢に対して薬事承認されていないため,「進行・再発がん患者の緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状の改善」の用法・用量に準じて使用することが多い。
■口腔粘膜炎予防の基本は口腔ケアであり,MASCC/ISOOのガイドラインでも推奨されている7)。具体的には含嗽の励行やブラッシングなどによる口腔内衛生の保持,治療前の齲歯や歯周病の治療である。
■1回につきアズレンスルホン酸ナトリウム水和物NaHCO3配合(含嗽用ハチアズレ®)顆粒2gを常温水100mLに溶解したもので口腔内含嗽を行い,これを1日4~5回行う。
■口腔内乾燥や,口腔内潰瘍が出現した際には,アズレンスルホン酸ナトリウム水和物NaHCO3配合2gにつきグリセリン液12mLを併用するほか,疼痛がある際にはキシロカイン液4% 1~2mLを併用する。
■口腔内潰瘍や口角炎のびらんには,0.033%アズレン(アズノール®)軟膏を塗布する。
■口腔粘膜炎が重症化,難治性である場合には,カンジダなどの感染を合併していることもある。適宜,歯科口腔外科に診察を依頼する〔歯科口腔外科診察が困難な場合にはミコナゾール(フロリード®)ゲル2% 1日4回口内塗布・含嗽を考慮する〕。
■口腔粘膜炎(Grade 3)の際には化学療法を休止する。Grade 1以下に改善した際に再開を検討する。
■遅発性の場合には,5-FUの減量も考慮する。
文 献
1) Sawaki A, et al:5-FU/l-LV(RPMI)versus S-1 as first-line therapy in patients with advanced gastric cancer:a randomized phaseⅢ non-inferiority trial. (ISO-5FU10 Study Group trial)European Society of Medical Oncology 2009, abstract 509.
2) Nakajima, et al:Randomized phase Ⅱ/Ⅲ study of 5‐fluorouracil/l‐leucovorin versus 5‐fluorouracil/l‐leucovorin plus paclitaxel administered to patients with severe peritoneal metastases of gastric cancer (JCOG1108/WJOG7312G). Gastric Cancer. 2020;23:677–88.
3) Freifeld A, et al:A double-blind comparison of empirical oral and intravenous antibiotic therapy for low-risk febrile patients with neutropenia during cancer chemotherapy. N Engl J Med. 1999;341:305-11.
4) Teuffel O, et al:Outpatient management of cancer patients with febrile neutropenia:a systematic review and meta-analysis. Ann Oncol. 2011;22:2358-65.
5) 日本臨床腫瘍学会, 編:発熱性好中球減少症(FN)ガイドライン改訂第2版. 南江堂, 2017.
6) Andreyev J, et al:Guidance on the management of diarrhoea during cancer chemotherapy. Lancet Oncol. 2014;15:447-60.
7) Elad S, et al:MASCC/ISOO Clinical Practice Guidelines for the Management of Mucositis Secondary to Cancer Therapy. Cancer. 2020;126:4423-31.
對馬隆浩