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外ヘルニア[私の治療]

No.5286 (2025年08月16日発行) P.44

上田 翔 (愛知医科大学病院消化器外科)

齊藤卓也 (愛知医科大学病院消化器外科/腹部ヘルニアセンター准教授)

佐野 力 (愛知医科大学病院消化器外科教授)

登録日: 2025-08-13

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  • 外ヘルニアという言葉を日常診療で使用することは少なく,明確な定義はない。内ヘルニアの対義語であり,腹腔内臓器が壁側腹膜に包まれた状態で腹壁の裂隙を通じて外側に脱出した状態とされる。鼠径部ヘルニアが最も多く80~90%を占める。そのほかにも腹壁(臍,白線,スピーゲル,腰,腹壁瘢痕),傍人工肛門,骨盤壁(閉鎖孔,膀胱上窩,坐骨,会陰)ヘルニアなどに分類される。本稿では日常診療で遭遇しやすい鼠径部ヘルニアについて述べる。

    ▶診断のポイント

    鼠径部ヘルニアは身体所見が重要で,ヘルニア部に膨隆を認め,診断率は70〜90%とされる。立位や腹圧上昇時に膨隆が顕著となる。超音波,CT,MRI,ヘルニオグラフィーなどが診断の補助として用いられる。当科では腹臥位のCTを施行し正診率を上げている。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ヘルニアは自然治癒することはなく,手術治療が唯一の治療法である。ヘルニアバンドなどの方法もあるが対症療法であり,嵌頓のリスクも伴う。

    還納性の場合は待機手術を行う。無症状であっても放置するとヘルニアが巨大化し日常生活に支障が出る場合や,嵌頓し緊急手術が必要となる場合があるため,全身状態が安定しており耐術能がある場合は手術を推奨している。しかしながら,併存疾患などで手術リスクが高い場合や高齢者でADLが低下している場合は,手術適応を慎重に判断する。欧米では10年の経過観察中,嵌頓症状で緊急手術に​なった症例は1000例中1.8例という報告もある​ため,慎重な経過観察(watchful waiting)を選択することも多い。

    非還納性の場合は腸管が嵌頓していることが多く,超音波検査や造影CT検査で腸管壊死の所見がなければ,まずは徒手整復を試みる。徒手整復できた場合も,腸管損傷などにより遅発性に腸穿孔を起こす場合や再度嵌頓する場合があるため経過観察入院とし,早期に手術を行う。徒手整復不能であった場合は,嵌頓しているヘルニア内容が大網であれば待機手術も可能であるが,多くは緊急手術となる。また超音波検査,造影CT検査で腸管壊死が疑われた場合は,徒手整復を行わずに緊急手術を施行する。

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