□起立性低血圧症は疾患ではなく,起立時に血圧低下をきたす病態の総称であり,数多くの神経疾患,循環器疾患,内分泌疾患や生理的異常によって生ずる。
□薬剤の副作用によっても引き起こされる。同病態は,年齢段階によって原因疾患が異なる。小児思春期における起立性低血圧症は,起立性調節障害(小児科領域を参照)の部分症状として現れることが多い。
□成人では脱水,代謝性疾患,末梢神経障害,高齢者では神経変性疾患などの部分症状として生ずることが多い。十分な問診と適切な検査を行い,効果的な診断や治療を行う必要がある。
□脳血流低下による症状が出現する。起立に伴う症状として立ちくらみ,めまい,眼前暗黒感,頭痛,失神などのほかに,末梢循環不全による頸肩痛,振戦,動悸,さらに中枢症状として虚脱感,嘔気,認知障害を認める。
□原因疾患に伴う症状を見逃さないようにする。
□食事性低血圧症では食事中から血圧低下をきたす特徴があり,食事中や食後に気分不良,全身倦怠が生ずる。
□原因不明の起立性低血圧症は起立性調節障害の部分症状である場合が多く,午前中の症状増悪(朝起床困難)と夜の症状改善が特徴的であり,欠席や欠勤が続く場合もある。
□起立性低血圧症を疑った場合には,起立試験,あるいはヘッドアップチルト試験を実施する。米国の神経学会や自律神経学会の定義1)2)によれば,起立後3分以内に収縮期血圧か拡張期血圧が,各々少なくとも20mmHg,10mmHg低下するとされている。診断を満たしても原因疾患を特定したことにならないので,神経疾患,代謝性疾患などのほか疾患を突き止める検査を行うことが大切である。なお,小児起立性調節障害については,小児心身医学会ガイドライン集3)で別途基準が定められている。
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