□感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)は,心内膜,弁やその支持組織に感染巣(いわゆる疣腫:vegetation)を形成し,菌血症,全身塞栓症,弁破壊による心不全,伝導障害など重篤な臨床症状を呈する全身の敗血症性疾患である。
□IEは先天性心疾患や弁膜症,人工弁置換後などの基礎疾患が原因で非細菌性血栓性心内膜炎(non-bacterial thrombotic endocarditis:NBTE)の状態となり,さらに口腔内感染や尿路感染症などによる一過性の菌血症状態を生じ,その部位に疣腫が形成され発症すると考えられる。また,透析や静注薬物常用も菌血症を生じやすいためにハイリスクである。
□発熱,悪寒,全身倦怠などの敗血症症状,心雑音,心不全,塞栓症状(意識障害,腎不全,感染性動脈瘤など)など多彩であり,古典的には糸球体腎炎,Roth斑,Osler結節なども知られる。
□24時間以上で連続3回の培養を行う。
□感染性心内膜炎の菌血症は持続性のものであるので,必ずしも発熱時を待つ必要はない。また,動脈血と静脈血で培養陽性率に差はないので,静脈血培養でよい1)。
□原因菌としては,連鎖球菌(~50%)や黄色ブドウ球菌(~30%)が多い2)。
□Streptococcus viridans,Streptococcus bovis,HACEK群はIEに非常に特異的である。培養陰性心内膜炎が5~30%程度あるとされており,その多くは投与中の抗菌薬の影響であるが,稀に難培養微生物(fastidious bacteria)や真菌などの可能性もある。
□必要に応じて血清学的検査やPCR法による同定を行う1)。
□診断大基準にみられる疣腫,膿瘍,人工弁裂開の証明が重要である。経胸壁心エコーを第一に行い,診断がつかなくとも臨床的に疑わしい場合は経食道心エコー検査を行う。
□IEの診断には従来から血液培養と心エコー検査を主体としたDukes診断基準が用いられるが,新しいESCガイドライン1)の診断基準では18F-FDG,PETなど新しい画像診断法も参考とされる(表1)。
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