□膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN)は,係蹄壁の肥厚(基底膜二重化;double contour),メサンギウム増殖や基質の増加による糸球体の分葉化(lobular appearance)などを認める病理学的診断名である。
□わが国の原発性糸球体疾患(IgA腎症を除く)のうち,5.5%を占める(日本腎臓学会レジストリーJ-RBR/J-KDR)。
□特発性の本症は,小児から30歳代までの若年者の発症が多いとされるが,近年発症率は減少傾向にある。
□成人例は,多くが肝炎ウイルス感染症,自己免疫疾患などによる続発性とされる。
□半数以上の症例でネフローゼ症候群を呈し,浮腫・体重増加などがみられる。
□血尿,高血圧,進行性の腎機能低下を認める。
□特発性の本症は予後不良であり,無治療では10~15年で50~60%が末期腎不全に至る。
□C型肝炎ウイルス感染に続発する本症では,クリオグロブリン血症を認め,紫斑や関節痛,末梢神経障害を呈するなど,その原因により症状は様々である。
□尿所見では,血尿のみの症例からネフローゼレベルの蛋白尿を呈するものまで様々である。
□尿蛋白は低選択性を示す。
□多くの症例で持続性の低補体血症がみられる。
□特発性MPGNは,電子顕微鏡所見による高電子密度沈着物(electron dense deposits:EDD)の沈着部位の違いから3病型に分類される。
□Ⅰ型:内皮下やメサンギウムへのEDDの沈着,Ⅱ型:基底膜内の線状EDD沈着,Ⅲ型:内皮下に加え,上皮下や基底膜内にも沈着。
□Ⅱ型MPGNは補体制御蛋白の異常によると考えられ,WHO分類ではdense deposit disease(DDD)として独立した疾患とされる。
□最近は発症機序に基づいた病型分類も提唱されている1)。
□原疾患として,慢性感染症(特にC型肝炎ウイルス,B型肝炎ウイルス),自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,シェーグレン症候群),血栓性微小血管障害(溶血性尿毒症症候群,血栓性血小板減少性紫斑病),補体欠損症,単クローン性ガンマグロブリン血症などの異常蛋白血症,悪性腫瘍(白血病,リンパ腫)などが鑑別に挙がる。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより