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多発性嚢胞腎(常染色体優性多発性嚢胞腎)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-19
河野春奈 (順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学)
堀江重郎 (順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授)
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  • ■疾患メモ

    国の指定する難病の1つであり,最も頻度の高い遺伝性腎疾患である。常染色体優性遺伝形式をとることから,両親のいずれかが嚢胞腎の場合は子に遺伝する確率は50%である。孤発例も5%みられる。

    年齢とともに進行性に両側の腎臓に嚢胞が発生,増大し,緩やかに腎機能が低下していく。60歳代で約半数の患者が末期腎不全に至り,腎代替療法を必要とする。

    腎機能障害の進行に先立ち高血圧を生じるケースが多く,血圧のコントロールが重要である。

    脳動脈瘤,肝嚢胞といった合併症を伴う全身性の疾患である。

    腎嚢胞による腎容積の増大と腎機能低下を抑制する治療薬(トルバプタン)がある。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    初期および腎臓が大きくない場合には無症状のことが多い。

    健診で異常を指摘され見つかることも多い。また,高血圧や血尿,腹部膨満感などの自覚症状で見つかることがある。

    進行し腎嚢胞による腎腫大が著明になると,背部痛や腹部膨満感を引き起こし,しばしば日常生活の妨げになる。

    【検査所見】

    CTもしくはMRIによる画像診断が必要である。家族歴がある場合は両側の腎臓に各々3個以上,家族歴がない場合は各々5個以上の嚢胞があることが診断基準である1)

    両腎の容積が病状の進行に関わっており,CTもしくはMRI画像より推算式もしくは回転楕円体容積計算を用いて計算する。楕円体容積計算式「π/6×長径×短径×奥行き」,回転楕円体容積計算「(π/6×長径×短径)の二乗」。

    脳動脈瘤を合併することがあるので,多発性嚢胞腎と診断された場合には,脳MRA検査を行うことが重要である。

    その他の検査として,血圧測定,腎機能等の血液検査,心臓超音波検査,腹囲測定などが診療に有用である。

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