DPP-4阻害薬は低血糖リスクが高くないということもあり頻用されている。しかし糖尿病例に対する腎保護作用は、それを肯定する試験もあれば否定する試験もある[Karimifar, et al. 2023]。そこで瀋陽薬科大学(中国)のAdili Tuersun氏らはランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施し、糖尿病関連腎臓病(DKD)に対するDPP-4阻害薬のアルブミン尿改善作用を検討した。その結果、腎機能が維持されていればプラセボや旧来の血糖降下薬に比べて改善作用が期待できるようだ。論文は10月17日、Current Therapeutic Research誌に掲載された。
メタ解析の対象となったのは、DKDに対するDPP-4阻害薬の腎保護作用をプラセボ/他血糖降下薬と比較したRCT 23報(1万6378例)である。なお安全性についての報告がない研究は除外されている。観察期間は8週間から302週間までと多様だった。また23報中9報は「eGFR≧60mL/分/1.73m2」例のみを対象としていた(例数不詳)。
これら23報を併合解析し、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の変化を、DPP-4阻害薬群と対照(プラセボ/他血糖降下薬)群で比較した。加えてeGFRの変化なども比較した。
・UACR
全体で評価したUACRは、DPP-4阻害薬群で対照群に比べSMD「0.23」の有意低値となった(95%CI:0.06-0.41)。ただし試験間バラツキの指標であるI2は、76%という高値だった。
そこでeGFR「60mL/分/1.73m2」の上下で二分して比較すると、「≦60」例ではDPP-4阻害薬群のUACRは、対照群に比べ「0.06」の低値となるも、有意差とはならなかった(P=0.25)。試験間における結果のバラツキも小さい(I2=33%)。一方「>60」例であれば、DPP-4阻害薬群のUACRは対照群に比べ「0.41」の有意低値だった(P=0.009)。こちらのI2は46%である。そしてこのDPP-4阻害薬UACR改善作用の、eGFR高低に伴う結果の相違は有意だった(P=0.04)。
・eGFR
対照的にeGFRは、DPP-4阻害薬群と対照群間に有意差を認めなかった。この結果は、開始時eGFR「60mL/分/1.73m2」の上下で2群に分けて比較しても同様だった。
・死亡(安全性評価項目)
DPP-4阻害薬群と対照群間に死亡リスクの有意差はなかった(DPP-4阻害薬群オッズ比:0.94、95%CI:0.83-1.06。I2=0%)。
Tuersun氏らは、これらのデータがDKD例、特に腎機能がまだ低下していないDKD例に対する、DPP-4阻害薬治療を支持するものだと評価している。
本解析には開示すべきCOIはないとのことである。