□血漿カリウム(K)濃度が5.5mEq/L以上になった場合に高K血症と言う。
□高K血症は,適切な治療が行われないと致死的な不整脈をきたす可能性がある。
□高齢患者や糖尿病患者の増加,レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用頻度が増えるにしたがって増加傾向にある。
□神経・筋の症状として手先のしびれや知覚異常,筋力低下などが現れる。
□心血管系に対する所見では,心筋の興奮伝達異常が生じるため,心電図異常を認める。K濃度が上昇すると,まずT波の増高,尖鋭化(テント状T)が現れる。さらに上昇するとPQ間隔延長,QRS幅増大,P波の平坦化がみられる。K濃度が8mEq/Lを超えるとQRSは正弦波様になり,さらに心房細動や心停止に至る。
□心電図は鋭敏な指標となるため高K血症を認めたらすぐに施行し,高度の高K血症を認める患者では治療中もモニターを続けることが大切である。
□消化器症状として悪心,嘔吐,下痢,腹痛などを認める場合もある。
□高K血症の原因は,①偽性高K血症,②細胞内から細胞外液へのKの移動,③Kの過剰投与,④腎からのK排泄障害に大別される。
□病態の鑑別には腎機能の測定に加え,PAC,尿中K排出量,FEK(fractional excretion of potassium:K排泄分画)を行う必要がある。
□正常値は10~20%である。高K血症でFEKの上昇はKの過剰摂取の可能性を,低下していれば腎からの排泄低下を疑う。
□血清K濃度が正常にもかかわらず,測定したK濃度が高値を示すものを偽性高K血症という。採血時の溶血が最も多い原因である。血清のピンクの色調やLDHの高値が参考となる。
□代謝性アシドーシスでは,細胞外液に増加したH+が細胞内に移行する代わりに,細胞内よりKが細胞外液に移動し高K血症となる。
□インスリンはNa-K-ATPaseの活性化により細胞内へのKの取り込みを促進し,Kは濃度を低下させるため,インスリン欠乏では高K血症が生じうる。
□ジギタリス中毒においてもNa-K-ATPaseが抑制されるため,高K血症がみられる。
□エピネフリンのβ2受容体刺激作用はKの細胞内への取り込みを抑制し,高K血症をきたす。
□細胞の崩壊(横紋筋融解症,火傷,血管内溶血,消化管出血,腫瘍崩壊症候群など)に伴い,細胞内からKの放出が生じて高K血症となる。
□外因性のKの負荷として赤血球輸血がある。保存血の大量輸血では細胞成分からKが遊出するため高K血症を認めることがある。
□K製剤やK含有薬物でも高K血症をきたす場合があるので注意が必要である。抗癌剤の投与は腫瘍崩壊を介して高K血症を起こすことがある。
□腎からのK排泄障害は,腎不全と尿細管でのK分泌障害に分類される。
□糸球体濾過値(GFR)が20mL/分以下になった腎不全では,集合管内流量,集合管へのNa+到達量の低下および集合管の広範な障害などからK分泌が抑制されており,高K血症をきたす。
□アルドステロンの作用が不足すると,皮質部集合尿細管におけるKの排泄低下が生じ,高K血症の原因となる。
□アルドステロンの産生が低下していないのに作用不足となるような病態は,偽性低アルドステロン症,遠位型(Ⅳ)RTA(renal tubular acidosis)や,尿細管間質腎炎,ループス腎炎,アミロイドーシス,腎移植後,閉塞性腎症などが挙げられる。薬剤ではスピロノラクトン,トリアムテレン,ナファモスタット,ST合剤,ジギタリスなどはK分泌を抑制し,高K血症をきたす。
□アルドステロンが欠乏しているような病態としては,副腎皮質の障害(アジソン病,遺伝性酵素欠損,後天性選択的低アルドステロン症など)や,低レニン性低アルドステロン症(糖尿病性腎症など),薬剤(非ステロイド系抗炎症薬,RAS阻害薬,シクロスポリン,ヘパリンなど)などがあり,高K血症の原因となる。
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