□多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は代表的な中枢神経系脱髄疾患で,年々増加傾向にある(国内では患者数約2万人)。
□日本人MS患者の約80%は時間的・空間的多発性を示す「再発寛解型」であるが,経過中に「二次進行型」に移行することがある。
□近年,MSから分離された視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)は,病態および治療反応性がMSとは異なる疾患である。
□抗アクアポリン4抗体陽性NMOは確定した疾患単位であるが,それに加えて,抗MOG抗体陽性NMO,抗体陰性NMOも含めた,視神経脊髄炎スペクトラム(NMO spectrum disorder:NMOSD)という包括的な臨床概念が提唱されている。
□視神経炎症状:眼球後部痛,視野のかすみ,視野欠損,視力低下など。
□脳幹症状:複視,顔面・口腔内異常感覚,三叉神経痛,嚥下障害など。
□大脳半球症状:物忘れ,認知機能低下,精神症状,疲労感,視野欠損,痙攣発作など。
□小脳症状:体幹失調,平衡機能障害,四肢の失調など。
□脊髄炎症状:筋力低下,歩行障害,四肢・体幹の異常感覚,排尿障害など。
□歩行可能距離の減少。
□体温上昇による症状の顕在化(ウートフ徴候)。
□しゃっくり,激しい嘔吐,重篤な視神経炎を示す症例では,MSではなくNMOを疑う。
□MRIで,脳室周囲,皮質下,テント下,脊髄に複数の病変を確認(図)。
□側脳室壁から垂直方向に進展する卵円型の病変(ovoid lesions)はMS診断の参考になる。
□造影MRI検査において非造影病変と造影病変が混在する場合には,時間的・空間的多発性が充たされたものと判断する。
□3椎体以上に及ぶ脊髄長大病変はMSではなくNMOを示唆する。
□髄液オリゴクローナルバンド陽性(MS全体の70%程度)。
□血液検査でCRP上昇などの炎症所見を認めれば他の疾患を考える。
□神経ベーチェット病,サルコイドーシス,脊髄腫瘍,脊髄空洞症,脳腫瘍,脳血管障害,梅毒などを総合的に鑑別する。
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