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非機能性下垂体腺腫

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-16
波多野雅子 (埼玉医科大学内分泌内科・糖尿病内科外来医長)
片山茂裕 (埼玉医科大学かわごえクリニック院長/埼玉医科大学理事・名誉教授)
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  • ■疾患メモ

    非機能性下垂体腺腫とは,ホルモンの過剰分泌や,それに伴う臨床徴候がない腺腫の総称である。

    下垂体腺腫は下垂体前葉から発生する良性疾患が多く,原発性脳腫瘍の18.2%を占める1)。また,非機能性下垂体腺腫は下垂体腺腫の45.5%に認める。発症率は10万人に7~22人である。好発年齢は51.5~65.5歳と中高年層に多く認められる2)

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    ホルモン過剰症状が出現しないため早期に診断されがたく,67~90%はマクロアデノーマの状態で診断される。

    症状としては,腫瘍の鞍上進展による視神経や視交叉の圧迫による視力・視野異常(両耳側半盲)が多い。また,頭痛も認められる。

    下垂体前葉機能低下症による症状もあり,成長ホルモン(growth hormone:GH)とゴナドトロピンの分泌が障害されやすい。

    小児では,低身長や二次性徴発現の欠如または遅延をきたす。

    成人男性では,リビドーの低下やインポテンツ,成人女性では無月経をきたす。また,成人のGH欠乏では易疲労感や不活発,肥満などを認める。

    【検査所見】

    MRIを主とした画像評価,内分泌検査,眼科的検査が主体になる。

    MRIで腫瘍の局在や性状,周辺組織との関係を評価する。

    非機能性下垂体腫瘍では一般的に脳灰白質に近く,T1画像では等~低信号を呈し,T2画像では軽度高信号を認める。造影性は正常下垂体よりも相対的に低い3)

    下垂体腺腫が鞍上部に進展すると鞍隔膜の部位でくびれができ,「8の字」状や「雪だるま」状を呈する。

    下垂体腺腫はしばしば海綿静脈洞内に浸潤するため,手術の際には海綿静脈洞浸潤の有無が問題になる。

    下垂体前葉ホルモンの基礎値〔副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH),甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH),黄体化ホルモン(luteinizing hormone:LH),卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:FSH), GH,プロラクチン(prolactin:PRL)〕ならびに標的内分泌腺ホルモン〔コルチゾール,甲状腺ホルモン,性ホルモン,インスリン様成長因子(insulin-like growth factors:IGF)-1〕の基礎値の過剰は認めず,逆にいずれかの低下を認める。PRLは視床下部や下垂体茎に障害が及ぶと高値を呈する。

    GH欠乏が78~88%,ゴナドトロピン欠乏が46~90%,TSH欠乏が13~60%,ACTH欠乏が13~60%であり,中枢性尿崩症は15%程度である2)

    下垂体予備能のための負荷試験は,下垂体卒中を惹起する危険性もあるため,慎重な対応が必要である。

    眼科的評価も必須であり,視野検査による評価や視神経の萎縮などの評価も行う。

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