副腎皮質機能低下症(副腎不全)には,自己免疫機序による特発性副腎萎縮と副腎結核が大部分を占める原発性のもの(アジソン病)と,下垂体異常による副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)あるいは視床下部異常による副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotropin-releasing hormone:CRH)の分泌不全に起因する続発性(二次性あるは三次性)のものがある。下垂体性は,免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象として遭遇する機会が増えている。慢性期と急性期(副腎クリーゼ)では,対処法が異なる点に留意する。
慢性副腎不全は,全身倦怠感,食欲低下,消化器症状(嘔吐,腹痛,下痢・便秘など),体重減少,低血圧,発熱,関節痛,筋痛などの非特異的な症状が徐々に出現してくる。無気力,抑うつ,昏迷などの精神症状がみられることもある。アジソン病ではACTH著増を反映する皮膚色素沈着が特徴である。
副腎クリーゼは,グルココルチコイドの急激な絶対的・相対的不足により,放置すると,急激な脱水状態,ショック,低血糖,発熱などの多彩な症状が同時多発的に出現・進行し,致命的な状況に陥る病態を指す。原因として,アジソン病だけでなく続発性慢性副腎不全症患者に感染などのストレスが加わった場合や,長期服用中のステロイドが急に減量・中止された場合の発症が多い。
末梢血液像で好酸球数増多,電解質では血清Naが低下し,時に血清K高値,肝糖新生減少による低血糖がみられる。循環血漿量減少を反映して,BUNやCr増加を認める場合もある。感染を伴う場合は白血球増加やCRP上昇をみる。
確定診断にはコルチゾールの分泌低下を証明する必要があり,治療前に採血,血中ACTHとコルチゾールを同時に測定し,フィードバック機構に基づきバランスを考慮して解釈する。早朝コルチゾール値4µg/dL未満であれば副腎不全の可能性が高く,迅速ACTH試験で負荷後30・60分値が18µg/dL未満であれば副腎不全を疑う。
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