□慢性副腎皮質機能低下症の主な病因として,後天性の原発性成因によるアジソン病(「§10-23 アジソン病」参照),があり,狭義のアジソン病としては副腎皮質ステロイド合成酵素欠損症による先天性副腎皮質過形成症(「§10-26 先天性副腎皮質過形成症(21-水酸化酵素欠損症)」参照),先天性副腎低形成症,ACTH不応症などとは独立した疾患単位として扱われることもある。
□アジソン病の病因は,①感染性,②特発性,③そのほかの原因,に分類される。感染症では以前は結核性が多かったが,近年は真菌性やAIDSに合併するものが増加している。
□特発性アジソン病の大部分は自己免疫性副腎皮質炎(抗副腎抗体陽性率60~70%)によって生じ,しばしば多腺性自己免疫症候群と呼ばれる,ほかの自己免疫性内分泌異常を合併する。そのうち副甲状腺機能低下症,皮膚カンジダ症を合併するⅠ型〔HAM(hypoparathyroidism,adrenal insufficiency,mucocutaneous candidiasis)症候群〕と,橋本病を合併するⅡ型(シュミット症候群)が含まれる。
□そのほかの慢性副腎不全の原因としては,がんの副腎転移,副腎白質ジストロフィー,悪性リンパ腫,副腎出血,副腎手術後,サルコイドーシス,アミロイドーシス,放射線照射,薬剤性などがある。
□一般的に,発症は緩徐で診断が遅れやすいため,ストレスを契機とした副腎クリーゼで診断されることも多い。
□原発性副腎不全と続発性副腎不全に共通するコルチゾール欠乏症状:易疲労感,脱力感,食欲不振,嘔気,嘔吐,腹痛,倦怠感,無気力感,不安,性格変化,意識障害,昏睡,血圧低下(アルドステロン欠乏も関与),脱水,発熱,関節痛,低血糖症状。
□原発性副腎不全と続発性副腎不全に共通する副腎アンドロゲン欠乏症状:女性の腋毛・恥毛の脱落。
□原発性副腎不全のみにみられる症状:色素沈着(口唇,口腔粘膜,歯肉,舌,爪,手掌のしわ,肘部,乳輪など)。
□低血糖(血糖値≦70mg/dL)。
□低ナトリウム血症(Na≦135mEq/L)。
□正球性正色素性貧血(男性13g/dL以下,女性12g/dL以下)。
□血中総コレステロール値低値(総コレステロール≦150mg/dL)。
□末梢好酸球増多(≧8%)。
□末梢血の相対的好中球減少,リンパ球増多。
□高カリウム血症。
□非ストレス刺激下で,早朝コルチゾール値が,①18μg/dL以上であれば副腎不全は否定的,②4μg/dL未満であれば副腎不全の可能性が高い,③4μg/dL以上18μg/dL未満では副腎不全を否定できない。
□迅速ACTH負荷試験〔コートロシン®(テトラコサクチド)250μg静注〕で負荷後30~60分のコルチゾール値の頂値が,①18μg/dL≧で副腎不全は否定的,②18μg/dL未満で副腎不全は否定できない,③15μg/dL未満,は原発性副腎不全の可能性が高い。
□低用量ACTH〔コートロシン®(テトラコサクチド)1μg静注〕でコルチゾール値の頂値≧20μg/dLであれば正常,20μg/dL未満で潜在性副腎不全を疑う。
□血清アルドステロンと血漿レニン活性でミネラルコルチコイドの評価を,DHEA-S(dehydroepiandrosterone sulfate)でアンドロゲン系やACTHレベルの評価を行う。
□ツベルクリン反応で結核の罹患歴を評価する。
□抗副腎皮質抗体は特発性副腎不全の40~70%で陽性となる。
□腹部CTで副腎腫大・萎縮,石灰化,腫瘍,出血などを評価する。
□続発性の場合には下垂体MRIで下垂体,トルコ鞍上部,視床下部の炎症性または占拠性病変の有無を確認する。
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