□神経内分泌細胞から生じる腫瘍は,以前はカルチノイド腫瘍(carcinoid tumor)と呼ばれていたが,現在では神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)と改められている。
□しかしながら,NETから分泌されるセロトニンをはじめとする生理活性物質によって誘発される症状は,現在でも「カルチノイド症候群」と呼ばれている。
□カルチノイド症候群を起こすNETの約70%が消化管由来であり,特に中腸NETが多い。そのほかには気管支,肺,卵巣などがある。
□中腸NETから分泌されたセロトニンは,門脈を通って肝を通過する際に不活化するので,臨床症状を現す例の多くは遠隔転移をきたしている。
□後腸NETはカルチノイド症候群の原因とはならない。
□発作性皮膚紅潮(80%):顔面,頸部,上半身にびまん性に出現し,数分で消失する。発汗を伴わない。
□下痢(70%),腹痛(50%):セロトニンなどによる腸管蠕動亢進。
□右心不全(40%):セロトニンやTGF-β,IGF-1などによる弁膜,心内膜の線維性肥厚。
□気管支喘息発作(15%):ブラジキニン,ヒスタミンなどによる気管支収縮。
□ペラグラ様皮疹(5%):セロトニン合成に利用される結果,トリプトファンが不足することによる。
□カルチノイドクリーゼ:稀に上記の症状が,麻酔や感染などのストレス負荷,あるいは特に誘因もなく激烈に出現するもので,生命の危険を伴う。
□血中セロトニンや24時間蓄尿におけるセロトニン代謝産物である5-ヒドロキシインドール酢酸(5-hydroxyindole acetic acid:5-HIAA)の高値。以下の物質は5-HIAA測定に干渉するので注意を要する。
□疑陽性の原因:アセトアミノフェン,アセトアニリド,カフェイン,フルオロウラシル,L-ドパ,サリチル酸,バナナ,チョコレート,アボカド,パイナップル,プラム,ナス,クルミ。
□偽陰性の原因:ヘパリン,クロルプロマジン,イソニアジド,メチルドパ,MAO阻害薬,フェノチアジン。
□血中クロモグラニンが高値を示すが,測定は保険収載されていない。
□画像診断による腫瘍の描出。オクトレオチドシンチグラフィーは感度,特異度ともに高い。
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