□ヘモクロマトーシスは,鉄過剰により進行性の多臓器障害をきたす疾患である。鉄が過剰に沈着すると,遊離鉄イオンにより活性酸素を生じ,組織障害を引き起こす。
□肝硬変・糖尿病・関節炎・心筋炎・皮膚色素沈着・内分泌機能低下などの多彩な症状を認める。
□鉄過剰は,原発性と二次性にわけられるが,わが国では,原発性の遺伝性ヘモクロマトーシスは稀であり,二次性の鉄過剰によるヘモクロマトーシスが問題となることが多い。
□遺伝性ヘモクロマトーシスは,複数の原因遺伝子が存在するが,消化管からの鉄の持続的な吸収過剰が原因となる。欧米諸国で最も頻度の高いHFE遺伝子変異型は,常染色体劣性遺伝で男性に多く,30~50歳で最初の症状がみられることが多いが,原因遺伝子によっては,若年発症のものもある。
□二次性の鉄過剰は,ヘモグロビン合成異常や無効造血を伴う血液疾患(サラセミア・鉄芽球性貧血・骨髄異形成症候群・再生不良性貧血など),輸血などで引き起こされる。また,アルコール性肝障害,C型慢性肝炎,非アルコール性脂肪性肝炎,肝硬変,代謝疾患などでは二次性の鉄過剰となり,肝組織に鉄の沈着を認める1)。
□新生児ヘモクロマトーシスは,遺伝性ヘモクロマトーシスとは別の疾患で,生後早期に急性肝不全をきたす。一部では,母児間同種免疫が関与するとされており,胎児期の母体への大量免疫グロブリン投与が有効とされる。
□初発症状は,倦怠感・皮膚色の変化・腹痛・性欲喪失・糖尿病の発症に関連した症状,関節痛・関節炎・肝腫大など,非特異的なものが多い。緩徐に進行し,典型的な症状(肝硬変・皮膚色素沈着・糖尿病・関節痛)がそろう症例は少ない。
□進行すると,皮膚色素沈着,関節症,不整脈・心筋症,性機能低下症などの内分泌代謝疾患が出現する。
□肝臓が最初に障害されることの多い臓器であり,肝機能が正常範囲でも,肝腫大がみられる。肝鉄濃度が上昇すると肝硬変となり,肝細胞癌の発症率が高まる。
□飲酒,ウイルス性肝炎や晩発性ポルフィリン症などの合併があると,病態の進行が早まる。
□血液検査:血清鉄170μg/dL以上・血清フェリチン500ng/mL以上,トランスフェリン飽和度45%以上(血清鉄÷総鉄結合能×100%)。
□肝生検:鉄過剰と肝線維化の評価を行う。鉄の沈着は,Perl's Prussian blue染色にて評価する。特に,門脈周囲に鉄沈着や線維化がみられる。
□肝鉄濃度(hepatic iron concentration:HIC)80μmol/g dry weight以上,肝鉄指数(hepatic iron index:HII)(HIC÷年齢)1.9以上。体内貯蔵鉄を定量的に評価できる。
□画像検査:肝臓のCT・MRI。
□遺伝子検査:二次性鉄過剰の病態がなく,Perl's Prussian blue染色で強陽性に染色される症例では,遺伝性ヘモクロマトーシスの可能性があるため,遺伝子検査を行う。
□そのほか:二次性鉄過剰症の原因検索,合併症の検索(耐糖能検査・心エコー検査など)を行う。
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