□平成28年の世界保健機関の報告によれば,年間の世界のマラリア罹患者数は2億1200万人(その88%がアフリカ地域),死亡者数は42万9000人(その90%がアフリカ地域)である。特記すべきは,死亡者の70%は5歳未満の子どもたちだということである。
□近年の日本国内の輸入マラリア患者数は,年間50人あまりと減少傾向にある。海外渡航者のマラリア予防に関する意識の向上が,その理由の1つと考えられる。
□ヒトのマラリアには,熱帯熱,三日熱,四日熱,卵形マラリアの4種類がある。近年東南アジアのサルマラリア原虫の一種がヒトに感染する例が散見され,死亡者も出ている。ここでは,日常診療で遭遇することの多い熱帯熱マラリア,三日熱マラリアを中心に概説する。
□突発的な発熱(40℃を超える高熱が稀でない),悪寒戦慄,頭痛などがみられる。
□熱帯熱マラリアでは,発熱は弛張する。三日熱マラリアでは1日おき,四日熱マラリアでは2日おきの周期的な発熱が典型的である。
□脳性マラリアでは,熱帯熱マラリア原虫寄生赤血球が脳の毛細血管に接着して,血流を阻害することにより意識障害や昏睡が起こるが,その診断は困難である。
□マラリアの診断は,ギムザ染色した血液薄層塗抹標本の顕微鏡検査により,赤血球に寄生した原虫を見出し,その種を形態学的に鑑別することが基本となる(図)。
□マラリア原虫の寄生赤血球率を計算し,重症度の指標や治療効果の判定に用いる。
□わが国では認可が得られていないが,濾紙クロマトグラフィーによる迅速診断キット(Rapid Diagnostic Tests:RDTs)が世界では標準化されている。
□PCR法による遺伝子診断法が,鋭敏度・特異度ともに高いが,その検査ができる施設は限られている。
□脳性マラリアは死亡率が高いので,血糖値や血圧を計測し,真の脳性マラリアとそうでないものとの鑑別を行う。
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